講談社文庫
矢村麻沙子は、推理作家だが、同時に民放テレビのニュースショウ番組で、実際の事件を解説し推理している。現在はフランスミッテラン大統領が、京都を訪問するとあって準備に怠りない。
ところが大統領が二条城を訪問すると、門に大きく沢木良夫との落書きがしてあった。沢木良夫なる男をを追うと4人が見つかったが、そのうちの一人が自宅マンションから墜落死してしまった。遺書はなく、ドアには鍵がかかり、密室である。京都府警狩矢警部が出動することになった。
矢村の元に「同様の事件がおこる。」との怪電話があった。広島県宮島でもノダアキコの落書きと女性の溺死体が発見された。野田秋子らしく、同じクラブに勤めるマリ子の話では、彼女は、8年前京都駅で記憶を失った自分を発見した、最近自分の過去を知っているものが現れた、と言っていたそうだ。
広島では8年前宮島に住む野田盛夫、秋子の新婚夫婦と盛夫の妹夕子がナイフでメッタ突きにされて惨殺され、秋子の妹和子が失踪するという事件がおきていた。事件は未だに解決されていない。
そのマリ子が失踪し、やがて大覚寺大沢池のほとりで死体となって発見された。青酸(カリ)中毒で、側に空の缶コーヒーが二つ。マリ子の前日の客は、森弁護士、原医師、歌手の浜野の三人だが、秋子や和子のかっての恋人の名前とは一致しない。
マリ子の毛髪からこよりにして織り込んだ手紙が見つかった。「秋子は実は和子で、過去を教えたのは先生ではないか。和子を殺したのは先生じゃないんでしょうね。」先生とは一体誰か。
原医師が自動車事故、彼は車に細工されたと主張する。しかし車の中からマリ子の毛髪が五本採取されたこと、原の昔の名前は石村一郎で実は和子の恋人だった事が明らかになった。手紙を突きつけると、彼は自分も受け取ったことを認めるが、殺していない、先生は森ではないか、と主張する。森も車を替えたばかりとかで怪しいが決め手がない。
そこに落書き事件は8年前にも起こった、との連絡が、広島から入る。犯人のうち、大分の丸山彦八は死んでいたが、福井の田倉青子は生きており、二人とも広島に本部のある新天地教の信者だった。どうやら事件はこの宗教が絡んでいるようだ。
警察の調べで、8年前に野田夫婦が京都に新婚旅行に行った際、いったんひき逃げ事故を目撃したが最初証言したにもかかわらずすぐ撤回し、広島に戻ったことが分かった。
田倉青子から矢村の元に「広島に来ている!助けて!」の電話の声。あわてて駆けつけると途中で田倉の兄が一緒になった。新天地教を訪れるがここには来ていない、の答え。
教祖の子は一生、二生、三生の三人だが、二生が事情を聞いてくれたが、いったんは地下に閉じこめられた田倉の兄と脱出するのが精一杯だった。それでも森弁護士が新天地教の弁護士をしていること、当時の秋子が一方で二生の恋人だったことも分かる。
原も秋子を愛していたことを認め、事件の日おかしな電話で呼び出され、夫婦殺害の跡を目撃したこと、和子を連れ帰ったが消えたこと、犯人にされかかったことを告げた。
矢村は、とうとう最初の沢木良夫密室殺人を解いた。紐に鍵を通し、花瓶に巻きつけ、紐の両端と鍵を持って外に出て施錠してから、紐に添わせて鍵を花瓶まで運ぶ方法である。これには郵便受けの穴かクーラーの穴を利用したと思われる。
私はいつも罠にかけられているようだ、と言っていた原が自宅で、健康機械に吊されてい
た。原が犯人で自殺とも考えられたが、矢村は軽い睡眠薬をのませたあとガムテープで口と手足を巻き、健康機械に吊るし、自殺と見せ掛けたと見破る。
しかし原は、密かに告白書を残しており、事件の全貌がほぼ明らかになった。
「発端は二生と秋子が恋愛関係に陥ったが教団が反対、秋子は野田盛夫と結婚、京都に新婚旅行に行ったが、二生が追った。それをさらに一生や犯人が追ったのだが、人を轢き殺してしまった。なんとか取り繕おうとしたが、今度は盛夫が秋子を攻めだし、夫婦を殺さざるを得なくなった。和子は私が助け京都に連れて行った。そのとき行きがかりで私は沢木良夫と名乗った。和子が自分の過去を調べそうになると、犯人は私への警告として二条城に沢木良夫と落書きし、同姓同名者を殺した。」
スケールの大きな推理小説で本来は倍くらいのヴォリュームにしたいところ。話を急ぎすぎている感があり、読んでいるときは筋を追うのに精一杯。やたらと殺人が多くてちょっと辟易する。しかし沢木良夫密室殺人と原一郎健康機械殺人はそれなりに興味あるものと言えよう。
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