文春文庫
桐壺帝の御代、御門の寵愛を一身に受けた桐壺更衣は玉の様な男子を生む。しかし我が子の東宮宣下を願う今をときめく右大臣の娘弘徽殿のために、毒殺されてしまう。国の乱れをおそれた帝は、更衣の子を源氏姓へと臣籍降下させた。物語はここから始まる。
やがて10数年、紫式部の教育を受けた源氏はまばゆいばかりに成長し、左大臣の娘葵の上を正妻とし、ふと見かけた夕顔をさらい、六条河原院で情事を楽しんでいた。ところが、その夕顔が、その最中にちん毒で死んでしまう事件が起こった。源氏の無二の友、中将が、毒物の入手先を追跡、ついに薬師洪庵を割り出し訪ね当てるが、すでに何者かに斧で頭を叩き割られ殺されていた。事件は解明されずむなしく時がすぎる。桐壺の更衣にそっくりと言われた藤壺が、男の子を生む。難産で藤壺は、死んでしまうが、子は成長、実は源氏の子だった。
そして弘徽殿の子朱雀帝の御代。帝にはなったものの、奇行はやまぬ我が子に、弘徽殿は気が気ではない。やがて葵の上も懐妊するが、変死。牛車の争いで恥をかかされた六条御息所の生き霊のたたりと言われたが、トリカブトによる毒殺であった。その通夜の夜、風体のおかしな祈祷師葎の尼も、祈祷中に何者かに矢で撃たれて死んでしまった。
中将が、複雑な事件の種明かしを朱雀帝、右大臣、弘徽殿、左大臣、源氏の前で行う。通夜当日の状況、薬師洪庵のもとの残り香等から、夕顔、葵の上、薬師洪庵、葎の尼殺人は、能力のない左大臣を見限り、右大臣派につこうとした源氏の仕業だ、と糾弾する。ことの成り行きに右大臣は仰天するが、身分の高い源氏を検非尉使に引き渡す訳にもゆかず、須磨に隠遁させる。
中将の独白「すべての殺人は私の仕業だ。源氏の目的は無き桐壺更衣を毒殺した右大臣と弘徽殿への復讐だ。敵をあざむくために多くのものを殺してきた。いままで彼は表、私は裏を歩いてきた。これからもそうだ。」と・・・・。源氏に完全なアリバイができたことを確認して、嵐の晩、中将は、右大臣邸に忍び入り、右大臣と弘徽殿の二人を虐殺する。事件はうやむやに終わったが、一本の矢が中将の命も奪った。撃ったのは源氏を恋する式部。
その後、あまりの事件に朱雀帝が退位。藤壺の子がめでたく冷泉帝として即位、源氏も復権する。式部は、幾多のいまわしい人殺しを闇にほおむり、「光」という名にふさわしい、永遠の恋人源氏を中心とする話に仕立てた。話は「紫の物語」として宮中でも大層な評判になった。
源氏物語に関することを詳しく調べ、おどろおどろしい殺人劇に仕立てている。非常に面白く、あの長ったらしい文章を読むよりはこの方が人間関係等理解しやすいとさえ言える。しかし、若い頃、持っていた源氏物語と言うものに対する美しいというイメージは木っ端微塵に吹っ飛ぶことは請け合い。
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