双葉文庫日本推理作家協会賞受賞作全集3
グリーン車の子供 戸板 康二
老優雅楽は盛綱陣屋の微妙役で出演するよう要請されたが子役の義蔵が気に入らず、返
事を躊躇していた。竹野と東京へ出るおり、隣に一人旅の女の子が乗ってきた。一つ前
の竹野の隣に京都から上品な女が乗ってきた。雅楽はおとなしい彼女がすっかり気に入っ
た。しかし、列車が東京駅に着く頃謎が解けた。雅楽は女の子に言う。
「その盛綱陣屋の小四郎に、君が出るんだね。」
女の子は義蔵だった。
視線 石沢 英太郎
梶原刑事は神社で行われている結婚式を見て驚いた。男は6ヶ月前の銀行強盗事件で最
初にホールドアップを食った有川。そのとき隣で非常ベルを押そうとした高山が強盗に
撃たれて即死している。梶原はそのとき有川が高山に投げた視線が気になっていた。
調べてみると新婦はその銀行の常務の娘。高山とその娘は結婚する予定だった。
来訪者 阿刀田 高
浮田真樹子のもとに幸恵を生んだときの助産婦神崎初江が訪ねてきた。いやになれなれ
しく、幸恵に近づきたがる。初江が去った後刑事が訪ねてきた。初江は淫蕩な娘の子を
殺したとのこと。地中に埋められ、腐乱死体で見つかった。しかしその娘が生まれたと
きと幸恵のうまれた時は同じ。真樹子は幸恵の顔をのぞき込む。何となく初江ににてい
る・・・・・。
赤い猫 仁木 悦子
金に困っていた沼手多佳子はある大きな屋敷の老女のお手伝いになり、気に入られる。
彼女の母は昔アパートを経営していたが強盗に殺された。クリスマスの頃、彼女の隣の
部屋の男綿井英太郎の元に赤い猫の人形を母がおいたのを覚えている。その数ヶ月前連
続放火事件が起こった。その話をすると老女は綿井こそ犯人という、赤い猫は放火を意
味するのだそうだ。
そして老女の死。遺産を多佳子にすべて贈るとの遺言。遺書によれば、綿井こそ老女の
唯一の息子だったがすでに他界していたのだった。
木に登る犬 日下 圭介
秀夫の犬が木に登れるか否かで、隣の家の秀夫と僕の弟の賢次のあらそう声が聞こえた。
その犬はさらにその隣の進から貰った者だという。進は営林署の裏の沢で死んでいた。
犬は実験してみると登らなかったが、秀夫は真智子という女性が目撃しているという。
しかし真智子は否定する。犬が古井戸で溺死寸前で発見される。崖の上の楠の上からは
真智子の部屋が見える。そこから真智子のあえぎ声が聞こえる。賢次が楠から落ちて怪
我をした。真智子の相手はどうやら逃走中の殺人犯らしいことが分かる。
果たして犯人は殺人犯との情事を隠蔽したかった真智子か、玉虫採集に夢中の賢次か・・
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