「禿鷹城」の惨劇

「禿鷹城」の惨劇       高柳 芳夫

新潮文庫

闇将軍と呼ばれる自由党の伍東代議士が、秘書の佐川、代議士の赤沢等をひきつれて、デユッセルドルフにやってきた。
彼が、東欧むけ大口径鋼管輸出に伴う長期輸出金融に決定権を持つとあって、競合する三星商事、岩倉商事、住吉物産、太平産業4社の幹部が首をそろえる。
ところがその夜、岩倉商事の目先支店長が、二重密室の中で青酸入りウイスキーを飲んで死に、工作用に用意したらしい200万ドルが、金庫から消えていた。
そして同じ夜、一緒にパリに行く予定だった秘書のエールシュレーゲル嬢が、空港に向かう途中の森の中で絞殺死体となって発見された。
同じころウイーン近く、ドナウ川沿いの禿鷹城には、伍東代議士ほか関係者が顔をそろえていた。
岩倉商事からは蒲原社長、岩倉専務、現地採用の木谷等が集合していたが、岩倉と木谷が会談中、隣室の蒲原が、窓から落ちて死んだ。
さらに夜半、岩倉と三星商事の野田社長が岩倉の部屋で刺されて死んだ。
これも密室であった。
これらの因果関係を明らかにし、どう密室の謎を解くかがテーマ。
まず岩倉商事では、残った唯一の関係者とも言うべき木谷が失跡し、逮捕される。
木谷は真相究明のため逃げたとするが旗色は悪い。
そんなおり、大使館の齋賀が、警察を尻目に鮮やかな謎解きをしてみせる。
犯人は支店長を毒殺した後、糸と紐の操作により、密室状態をを残しながら脱出した。
秘書の絞殺はたやすい。蒲原社長はあらかじめ殺して窓につるしておき、隣室から紐の操作で死体を落とすと同時にテープで悲鳴を聞かせた。
野田社長と岩倉専務がおそわれたケースは、争った跡と人が部屋に入った跡がないから一方が犯人・・・・。
以上から統べては社長と敵対関係にあった岩倉専務が地位保全あるいは奪取のために行った犯行、とした。
岩倉は逮捕、収監され事件は落着した。
それから2年、岩倉商事は、伍藤代議士が支持する住吉物産に吸収されていた。
木谷は冷や飯を食わされることになったが、ある時、住吉物産の部長に栄転した佐川を発見する。
そうなると、蒲原殺しは岩倉と蒲原社長の部屋を挟んで反対側の部屋にいた佐川にも可能だったこと、岩倉と野田をおそった密室に残っていた鍵は佐川の部屋の鍵ではなかったか、などの考えが浮かんできた・・・・。

密室トリック解明のおもしろさと、ドナウ川沿いの古城を舞台にした大物政治家のからむ利権争いが魅力。また他の作品と同じく、犯人らしい男が逮捕され、その無実が逮捕され縛につくが、真実は・・・という三段構えの論理展開も魅力的。それにしても複雑な密室トリック。実際にできるのかしら、と考えた。

・2冊のパスポートの使い分け(322P)
・機械的密室と心理的密室(329P)
・ドアがしまって見える・・・・「つめ」をセロテープで固定(375P)