角川文庫
11月末のある日、行方不明になっていた大阪丸木製薬のやり手営業部長松崎は、兵庫県の山中で首吊り死体となって見つかった。
丸木製薬は最近株屋の角沼が乗っ取り、社内は人事で揺れており、松崎は突如左遷されて自殺したとの噂だった。
松崎に助けられ、今は丸木製薬の系列泉田製薬の青年社長に収まっていた泉田は、自殺の噂に疑問を抱き、吉原製薬社長吉原夏子、業界紙記者大谷典子の協力を得て調査に乗り出す。
終戦直後の米軍諜報機関の暗黒組織が明らかになる。
松崎と角沼、および角沼がおそれる金貸しの井上が退蔵隠匿物資摘発機関のメンバーであったこと、そして3人が泉田の父がぬれぎぬを着せられた共産党工作員宇津木殺害事件でつながっていることが明らかになった。
そしてどうやら松崎は会社を裏切り、井上、角沼と組んで会社乗っ取りに参加したものの、仲間割れで殺されたらしい。井上、角沼が丸木製薬を買収したのは会社の株価をデマでつり上げ、もうけると共に、ただ同然の土地を会社に高値で買わせ、金を吸い上げることが目的であることを発見する。
さらに松崎から泉田のもとに送られたスパイ高橋久子の死・・・・。
泉田は松崎、高橋殺しの確証を握ると共に、ついに井上、角沼が民有党の大物犬塚代議士の秘密を握り、国有地の払い下げなどに便宜を得ていたことをつかむ。
角沼の正体暴露で角沼を丸木製薬から追い出し、犬塚代議士との面談により、松崎の死を再調査させ、井上、角沼を追いつめる・・・。
著者の経験に基づくものなのだろうか、裏社会の実体らしきものとそこにうごめく男女の生活がよく描かれている。
社会派推理小説で、読みながら松本清張等の前駆的作品か、などと考えた。
・人間関係というものは所詮生理的な嫌悪が根本にたつようであった。(430p)
・・・・・過去の傷をけろっと忘れている奴、この世の中で、もっとも恐ろしいのは、そんな奴らだよ。(562p)