講談社文庫
昭和63年の夏の甲子園大会は千葉代表と茨城代表で争われた。両校の監督はかって準
決勝で敗れた名門信光学園でバッテリーを組んでいた仲だった。
しかし信光学園や千葉代表が強くなっていった影には、手品があった。スピードガンに
より、投球速度をはかり、それによりカーブが直球か判定し、直前に無線により打者に
知らせるのである。もちろんそのためには耳からはいる直前の信号で体が反応するよう
訓練する必要はあるが・・・。そしてこの事実を知って野球賭博に利用している暴力団
があった。
事件をフリーライターの大八木とともに追った新聞記者の中山は密室の暴力団ハンデ師
殺人事件に遭遇する。そして暴力団の指示に反旗を翻し、準決勝で信光学園に勝ってし
まった千葉代表監督向井には死が待っていた。しかし、翌日両校の選手たちは正々堂々
と高校生らしく戦った・・・。
このように書くと非常に暗い作品に感じられるが、全体としては高校野球、あるいは青
春時代の賛歌が下にあると感じられる。作者はもと東京大学野球部だったという。
密室のトリックはドアチェーン越しに水中銃で手術用のメスを打ったものだった。それ
も2本打って1本は糸をたぐって回収したという事だが、ちょっと苦しい気もする。技
術的には銃と刃物の中間の凶器というところだろうか・・・。
文章は簡潔で非常にわかりやすい。逆に特色がないともいえるが、それが基本と思う。
プロットは非常に良く考えられており、すきがない。