花の棺       山村美紗

光文社文庫

 アメリカ副大統領とともに生け花を習いたいという令嬢キャサリンが来日。エスコート役に浜口一郎が任命される。令嬢を弟子入りさせようと、東流、京流、新流の三派家元が競作を行う。そんな中キャサリンは知り合いの東流小川麻衣子に会いたがった。彼女は京流久城麗子と共に生け花界の二大名花と言われるが、世襲制度に強烈に反対する発言をした後、行方が分からなくなった。二条城で花火の爆発事故があったが、副大統領はキャサリンと京流家元を訪問するなど、日本を楽しんだ後マニラに経っていった。浜口はキャサリンを押しつけられた形になった。

 雪降る2月17日、堀川三条近く空也堂境内で、麻衣子は青酸カリを飲んで死んでいた。そばにコーヒーの空き缶、指紋は彼女の物のみで付き方が非常に不自然で他殺と考えられた。この事件の捜査を買って出た警視庁狩矢警部が調べると、彼女は東京から来てSホテルに落ち着き、ここには誰か男性に会う目的で来たらしい。マンションから2月3日PM3:00、10日PM4:00、17日PM7:00の書き付け。10日PM4:00には二条城爆発事故時刻、17日PM7:00は麻衣子の死亡推定時刻、二つの事件は関係があるのだろうか。そして24日京都でまた花火による爆発騒ぎ・・・・。

 3月3日、雛祭り、華道界では各流派の代表による会長選挙が行われ、それぞれの利権をかけた画策が始まった。京流家元が会長に選ばれ、動議を議論しようとした矢先、その京流家元が離れの茶室で遺体となって見つかった。被害者の足跡がなく、茶道口の襖もしまっていたから、キャサリンは「二重密室!」とつぶやく。狩矢警部に聞かれて、キャサリンは容疑者1号は東流家元、ほかに京流息子西川和彦犯人説、三人共同説などを展開、米国名探偵ハニー・ウエストきどりだ。西川はまもなく見つかるが、捜査に非協力的だ。

 考えてみると今回の犯罪は毎日曜、場所は二条、三条、四条、五条、それなら次は10日六条西本願寺と狩矢警部、キャサリン等が待ちかまえると、バルサンによる発煙騒ぎ。狩矢の部下林は小川麻衣子、西川和彦恋人説を展開、調査を命じられる。3月17日に新しく会長に就任した東流家元のもとで全国華道大会が開かれることになったが、その家元が脱税騒ぎでスキャンダルの対象にされたあげく、行方不明になり、自宅には「自分は誘拐されている。」の連絡が入った。三重県合歓の里でキャンピングカーが1台消失、後の地面に大量の血の後と東流家元の指輪が落ちていた。七条堀川の警察官が路上放置車の中に東流家元の刺殺死体を発見した。検問をはっていたからどうやって車は合歓の里から京都まで行ったのか。検問に1台キャンピングカーが尋問を受けていたが、伊吹教授だった。

 24日八条、京都駅で伊吹教授が新幹線に飛び込んだ。殺人と断定したキャサリンは、伊吹の行動が東流家元殺害に必須だったと考えて、ついにキャンピングカー消失の謎を解く!京流西川和彦が東流麻衣子と恋人同士で、今度の犯罪が彼らのデート計画にのっとった場所で行われているとを明かす。狩矢警部とに訪ねた久条麗子は、京流家元殺人事件で茶室の下にいれてあった桐の板が使われたのでは、と助言し、密室トリックの半分が分かった。31日、久城麗子のマンションから出火。戸口に倒れていた彼女が危うく救出された。警察は西川和彦を逮捕するが、キャサリンは密室トリックの残り半分をさんざん考えた結果、方法をつき当てた。襖の鍵をかけ、真ん中を破って外に出る、すぐスーパー等で売っているインスタント襖紙を張り付ける、という方法である。犯人だけがこの方法を取らざるをえなかった、と西川の無罪を逆に証明してしまった。

 犯人の犯罪動機は恋人を奪われたから、結婚の約束を守ってくれなかったから、昔、母がこの男に捨てられ、自殺したから、犯罪を目撃されたから、最後は狂言とおよそ推理小説にありそうな動機のオンパレードである。犯罪手法は、襖紙は良く同じ物を用意できた物とあきれるし、キャンプ場を使った殺人はなぜここまで複雑なプロセスを取る必要があるか疑問だが、論理的には面白く可とするか。現場に血液をばらまき、犯罪現場に思わせるトリックが使われているが、血液にクエン酸ナトリウムを混ぜる物で「ポアロのクリスマス」に使われているそうだ。

 「マラッカの海に消えた」に続く山村美紗長編の2作目。文章があらく、登場人物の性格付けもまだ、と言う感じがする。探偵役のキャサリンにしても、小川麻衣子や久城麗子にしても美しいと言うだけで、どういう女性なのかイメージが湧かない。しかし丁寧に読んでみると、ストーリーが良くできているし、デイクスン・カーばりの密室トリック、出し入れトリックが非常に面白く興味を抱かせる。探偵役のキャサリン、おもり役の浜口一郎という取り合わせも、少女小説みたいな雰囲気がないでもないが、新鮮で楽しい。また彼女が京都によく精通していること、華道に対する造詣が深いことが物語をあでやかに見せ、単に探偵小説だけで終わらせていない。

(1975)

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