人喰い        笹沢 佐保

徳間文庫

 本田銃砲火薬店に勤める花城由記子が、社長の息子昭一と恋におちたが、労使間紛争、先方の両親の反対などでうまく行かない、心中する、との遺書を残して蒸発してしまった。二人は昇仙峡で睡眠薬自殺を計ったらしい昇仙峡で昭一の死体のみが発見された。また労使間紛争はこじれて、工場の火薬倉庫が爆発し、それに伴う社長婦人が亡くなってしまった。世間は、実は由記子が生きていて、爆発事件を起こしたのではないか、と疑い始める。
 由記子の妹、佐紀子は、恋人でかつ労働組合委員長の豊島とともに、捜査に乗り出す。やがて社長の刺殺事件、柏原専務の社長就任、豊島の抜擢と続く。
 事実は豊島が由記子と昭一が心中することを知り、後をつけ由記子の死体を隠す、その後豊島は、本当の恋人、浦上と組んで、由記子が生きているように見せ掛け、爆発事件、 社長暗殺事件を起こしたものだった。豊島は自分を認めてくれ、重く用いてくれる上司、柏原専務のもとで働きたかったからだ。
 きびきびしたこきみよい展開である。豊島の最後の「私は後悔しないし、悪いことをし たとも思っていない、ただ残念だという気がする。私は負けてしまったのだ。」というくだりがこの作品の基本で、高度成長時代の日本の若きサラリーマンの一つの生き方を示していると言えよう。

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