双葉文庫
1965年9月、私は独立して間もないインドネシアに特派員として派遣される。ニューヨーク時代に世話をしたフリーのカメラマン鳩谷の口利きで、中国人黄伯元のパーテイに招かれる。昔の恋人、今はシプリン議長夫人の節子に会う。鳩谷はその夜、私をホテルに訪ねてくるが、以後、行方不明になり、やがてバンドンで死体で見つかる。
バンドン取材から戻ると、ホテルの部屋が荒らされており、連絡を頼んだ助手カルテイカも殺された。そして私は殺人容疑で留置されてしまう。メノン中佐のクーデターらしい。スパイ容疑で殺される所を節子の助力により、危機一髪で逃れ、反対派のウータン少将と知り合う。クーデターがウータン派の勝利に終わった頃、ようやくホテルに戻り、部屋を再度点検し、鳩谷が残した写真を発見する。
私はシプリン議長、メノン中佐、黄伯元のの3人が組んでおり、鳩谷は黄伯元のスパイとして働いていたが、裏切ったために殺されたと推定する。しかし犯人は新聞記者を装った黒崎だった。彼はCIAの手先で、鳩谷はCIAからインドネシア軍内部に送り込まれたスパイだった。そして、黒崎と私の対決・・・。
インドネシアのいわゆる9・30革命を背景にした日本では珍しい本格的国際スパイ小説。事実とオーバーラップされて書かれており大変面白い。
あとがきによると著者はインドネシアに行ったことがなく、作品は机上の産物であるという。それにもかかわらず、現地の情勢が驚くほどリアルに書かれている点に感心する。
・(電報の)発信地や発信時刻をよく見ておけばよかった、と私は悔やんだ。そうしていれば、彼が、何時頃何処にいたかもはっきりしたのである。(136p)
・あの男の武器は、例の義眼だった。あの義眼はね、本当は精巧な小型カメラなんだ。(283P)
* 義眼がカメラ