石の下の記録         大下 宇陀児

双葉文庫

 戦後間も無く、代議士の息子の藤井有吉は、悪友達と刹那的な享楽に溺れていた。悪友たちは、ついには遊ぶカネほしさから強盗を犯す。彼等を助けるために、有吉は、諸内から父への賄賂の一部を盗み出す。しかし強盗仲間の園江が姿を消し、不安が広がる。有吉のもう一方の頭の良い友人、笠原は、有吉の母貴美子に接近する。
 そんなおり、父が自室で何者かに惨殺される。そして残りの賄賂の金が消えていた。有吉は、賄賂の金のありかを不用意に教えた園江が、父を殺したと考え、恋人と自殺を計るが、一命を取り止める。一方、笠原は、学生の金貸し会社を作るために悪友たちを仲間にいれる。小さな事務所を借りることにするが、そこには猫の死体が・・・。そして工事をした床下から園江の死体。結局、園江殺しも父殺しも、笠原の資本金欲しさの犯行だった。

 笠原の最後の告白で「・・・・私は、自分の欲するものに対して、勇敢に突進した。世間にはこの勇敢さを欠くために、実は私と同じ事をしたいと思いつつ、それが出来ないでいる人がかなりに多い。」と述べ、私の場合は善悪判断の尺度計が違っていただけだ、とするくだりが面白く感じた。後の社会派探偵小説のさきがけとなった作品とのことだが、 文章が非常に落ち着いており、 さながら戦後の混乱期に蠢く人間群像を描いた文学作品という趣である。(1948? 52)

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