角川文庫
源義経が奥州衣川でうたれたという説には多くの作為と疑問が散らばっている。
その際たるものは北海道まで逃げ、シベリアにわたり、そののち南下、成吉思汗となったのではないかというものである。
鎌倉勢が蒸し暑い6月に43日もかけて、奥州から義経の首をもちかえったのは、腐らせて分からなくするためでは無かったか、
衣川の戦いは偽戦では無かったか、
椿山心中伝説は本当か、
最近起こった天城山心中はその再来ではないか、
アイヌに残る伝説上の人物ホンカイサマは判官様のことでは無いのか、
黄金の鷹をおってポンルルカに渡ったというのは、金を求めてシベリアにいったということではないのか、
成吉思汗の謎にみちた前半生をどう説明するのか、
フビライは日本をせめて失敗したわけだが、どうしてあんな悠長なてぬるい攻め方をしたのか、
と次々疑問を投げ掛ける。
そしてその答えを求め、マルコポーロの記録、日本軍のシベリア出兵、蒙古に残る数々の日本に似た知名や習慣などについて考察している。
ただしこの作品ではいわゆる殺人事件は起こっていない。義経は成吉思汗ではないかという疑問に答えるためにのみほとんどの紙面が費やされている。したがって推理小説と言うべきかどうかは分からない。