十字路    江戸川 乱歩

春陽堂文庫

 若い女秘書と恋愛関係にあった商事会社社長伊勢は、尋ねてきた日輪教の狂信的信者である妻の友子を絞殺する。死体をこれから水を張る予定の藤瀬ダムの古井戸に捨てようと考え、車のトランクに隠し、出発する。しかし新宿ガード下の十字路で突発的な交通事故に会う。
 そのすきに、車の中にもうひとつの男の死体が出現。やむなく二つ死体を古井戸に捨て、石を投げ込む。やがてダムには水がはられ、友子ともう一つの死体の男は行方不明者として処理されようとするが・・・。
 倒叙法で書かれている。後半は捜査をする警察と私立探偵、追いつめられる犯人のそれぞれの動きがおもしろい。
 最後に事件を解明し、強請に来た私立探偵を、伊勢は車で連れ出し、急停車させ、つんのめったところをスパナで叩き殺す。死体を海に捨てようとするが、警察に追及され自殺。電話によって破局を知った若い女秘書も、ビルから身をなげ遠隔心中が成立。ふたりが犯罪者ながら人々の同情を引いた、というところが人情味が溢れて素晴らしい。

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