カデイスの赤い星        逢坂 剛

講談社ハードカバー

 日野楽器は、スペインのギター製作家ラモスを迎えて、ギター教室キャンペーンを張ろ うとしていた。そんなおり、下請けをやっているPR事務所の漆田は、同社の欠陥ギター 問題で全消同盟の槙村真紀子と対決する。そして槙村を動かしている太陽楽器の大野専務、その下請けPR会社那智理沙代を知る。
 一方漆田は、ラモスから、スペイン財閥ドン・ルイスの財産たる宝石を埋め込んだ名器サントス・ エルナンデスを、娘をだまして盗みだした、サントスと称する日本人を捜して欲しい、と頼まれる。
 漆田は、事件を追う内、ラモスの娘のフローラとサントスの息子らしいギタリスト、パコと称する日本人が、好き会っており、しかも左翼過激派日本列島解放戦線に出 入りしていることを知る。フローラは、パコとスペインに帰国するが、スペインではフランコ政権が 独裁政治を欲しいままにし、左翼狩りをしている。
 サントス・エルナンデスの奪還、フローラの保護等を頼まれて、漆田は、スペインに飛ぶ。そして不思議なことに大野専務からサントス・エルナンデス探しを共同でやろうと のの申し入れがあり、那智が派遣される。
 スペインの極左組織FRAPはアンヘルを中心とし、フランコ暗殺をねらっていた。その目的にそってフローラは爆弾のスペシアリストで槙村真紀子の息子優を仲間に引き入 れたのだった。
 アンヘル、フローラ、パコ等を漆田、那智、偶然知り合ったギタリストのマノロこと清水がおい、これにサンチェスを中心とするスペイン治安部隊、右翼団体 JEDRAが絡む。
 舞台は、マドリードからグラナダ、さらにラモスの出身地カデイスを 経て、再びマドリードへ。暗殺は阻止されるものの、サントス・エルナンデスは清水が 盗み、日本に渡ってしまった。
 最後に日本でのサントス・エルナンデス争奪戦。サントスこそ大野専務であり、フロー ラは彼がギターを持ち出す際にラモスの娘と関係してできた女であることが分かる。ギターは返され、大野専務は車の事故により死亡する。

 ギターについての専門的解説、マドリード、グラナダ、カデイスなどの地理的状況説明 と共に、フランコ政権下の3つ巴の追跡劇が息もつかせぬ迫力で描かれており、ロマン あふれるエンタテイメント小説になっている。

・まず問題の赤いダイヤモンドを、糸蔵の天辺に埋める。次に6本の糸巻きの先端に一 つづつ仕込む。そして最後の一つをセヒージャの頭に埋め込んだ。(156p)
・「・・・・除草剤の多くは、強力な酸化作用を持つ薬品が使われている。彼はそれを 原料にして、爆薬を作ったんです。かっては日本でもそういうことが行われていた。」
「薬品というのは、塩素酸カリのことかね。」(296p)
・たちまち目の前に火花が散った。沸騰したものが、一気に噴出した。好きなように声 を出し、思う存分自分を解放する。(370p)

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