角川文庫
玉木造は一流会社の課長職を投げうって、出入りの不動産屋黒川軍二と小さな不動産会社を始める。早速10億円の商談が纏まるが、売買当日売り主の上村卓もその妻と称する謎の女も現れない。しかし、書類上問題がなかったことから売買が成立し、登記をするが権利証も印鑑証明も偽物。そのうえ上村卓は独身だった。
玉木と上村は玉木の別れた妻美喜の働く大登弁護士を尋ねる。まず上村側からの要請で登記抹消請求をする。一方買い手の金村辰之助は、その土地にボーリング場建設を始める。たとえ裁判になり、土地を返さなければならないとしても10年先の話し、その期間収益を上げられるという考えのようだ。
これを止めるため、大金を積んで、建築中の建物収去と土地の明け渡しの民事訴訟を起こす。しかしその大登が、帰宅途中に崖から突き落とされて殺される。一時迎えに出た美喜が疑われるが、目撃者の八木が姿を消したことから無罪になる。
玉木は一連の犯罪の影に黒川を見て追及しようとしたが、その矢先今度は黒川が殺される。ボーリング場建設のほうは金村が建設主体を会社から個人に替えたり、受取人不在で逃げたりで止められない。
しかし黒川の死を、密室心中事件に見せ掛けた氷に毒物を仕込んだ時間差殺人である事を見抜いた玉木と望月刑事は、実はこの犯罪が上村卓がしかけたものと見破る。実は八木は黒川、謎の女はゲイボーイとして働く上村卓で、上村が出店の金欲しさから黒川と相談して犯行に及んだ物だった。最後に美喜が玉木のもとを去った理由が明らかにされる。
この小説の魅力は何と言っても、豊富に盛り込まれた法に基ずくごまかしとその対抗策にある。法律を生かした本格推理小説で骨組みがしっかりしており、非常に興味深いと同時に勉強になる一冊だ。
r991003