顔    松本 清張

双葉文庫


 日記スタイルで書かれている。劇団「白楊座」の井野良吉は映画出演の依頼を受け、困ってしまった。彼は、昔恋に落ちた女給ミヤ子を殺害した。二人の関係を知る目撃者も知人もいないはずだったが、列車の中であったミヤ子の友人石井だけが気がかりだった。彼はこの8年ずっと私立探偵を使って彼のその後を調べさせていた。全国に自分の顔が出る、と恐れた井野は、ミヤ子のその後を知っていることを餌に石井を呼びだし殺害しようとする。しかし石井が自分の顔を覚えていないことを知り、そのままにする。やがて映画が封切られ、石井に記憶が蘇った。

殺意
 株式会社Mの磯野営業部長が薬局会社から送られてきた心臓用の試薬を飲んだところ、青酸中毒で死亡した。製薬会社の封筒および試薬の入手先の調査から、秘書に呼ばれて駆けつけた総務課長の稲井が疑われた。磯野と稲井は同期で、仲が良いとの評判、しかし古瀬判事は、やはり稲井が犯人と確信し、動機を自分の過去の経験と照らして検討する。青酸カリをふのりにとかしそれを試薬にコーテイングする過程説明が面白い。

なぜ「星図」が開いていたか
 会社の権力争いでハン・ストを行い、帰宅した心臓の弱い藤井都久雄が心臓麻痺で死亡した。側には「星図」の項を開いた立派な百科辞典。実は藤井の妻と関係していた同僚の山岡は、藤井をハン・ストに誘った。
妻は藤井が蛇が嫌いなことを知っていた。山岡は、菅野真道について教えて欲しいと藤井に頼んだ。
ストあけで体の弱っていた藤井は、「菅野真道」を調べようと百科辞典を開けたが、「星図」のページにあった蛇の抜け殻のしおりを見て倒れた。

反射
 霜井正雄は雨宮スミ子が金が入ったと知り、絞殺して金を奪い取った。状況がクロでも証拠がなければ大丈夫、と考えた霜井は金を4つの銀行に分散して預け、さらに通帳までも預けてしまった。香春警部はミュンスターベルグの方法に従い、事実を所々変えて説明し、霜井の反応を伺い、犯人と確信した。しかし妙に大切にしていた判子が見つけだされた・・・。

市長死す
 東京での重要な会議を抜け出して、山里の温泉に出向いた市長は、旅館の見晴らし台から墜落死してしまった。若い醤油屋の議員笠木は、市長の古い日記を調べるうちに、終戦時南鮮戒厳司令官だった市長が、女と大金を山下なる男に頼んで内地に送ったが、両者を奪われてしまった事を知った。笠井は、市長がテレビで山下がその温泉にいることを発見し、急遽その温泉に行ったと考えた。市長の泊まった旅館の主人は、不振な男を指摘するが、男は消えてしまう。しかしテレビフィルムを良く見ていた笠木は、女を発見、旅館の主人が、山下であることを見破る。

張込み
 ある重役が殺された事件で、某土建業者の飯場にいる男が逮捕されたが、 彼は自分は従犯で、主犯は石井という男だと主張。常々昔の愛人にあって死にたい、 と主張していた石井の言に従い、警視庁の柚木は九州の山間の町まで追跡、 今は人妻となり、幸福とは言えない生活を送っている女の家を張り込む。あらわれた石井と女を近くの温泉まで追跡、ついに逮捕する。 女は数時間の命を燃やしたに過ぎなかった。

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