顔にふりかかる雨     桐野 夏生

講談社ハードカバー

村野ミロは、突然「あなたの友人の宇佐川耀子が、暴力団の金4700万を持って消え てしまった。何か知ってるはずだ。」と耀子の内縁の夫成瀬と暴力団上杉の手下君島に 捕らえられ、調査を強要される。
耀子の行方は、友人に会っても母親にあっても分からなかった。しかし、死体写真愛好 家の川添が、耀子の溺死写真を手に入れ、ミロに示したことから事件は急展開する。
耀子は東ベルリンに潜入し、ネオナチの抗争を取材していた。そして偶然に、日本から その運動に参加していた男達の殺人劇を見てしまった。そのために拉致されたのだが、 暴力団から預かっていた金を、自社の経営に苦しんでいる成瀬がねらっていた。しかし 金を発見した耀子の事務所のゆかりと情夫の藤村が横取りしてしまった。そこで耀子は いないかと追跡してみせた訳だ。最後にカナダに脱出しようとした成瀬が逮捕される。
上杉を中心とする暴力団のやり口の記述が迫力がある。またネオナチと日本のアングラ 劇場に関する記述も作者の感覚の新しさを感じさせる。文章もこなれている。ただ上杉 が全く無傷で金を回収し、万々歳という結論は後味が悪く感じた。また成瀬の犯行とい う真実の発見が、隠されたフロッピーで暴露されるという解き方が気になった。
・リダイアルボタンの使い方(124p)
・耀子の悲劇は、彼女が人より野心に満ちていたからでも、見栄を張っていたからおき たのでもない。愛しようのない男を深く愛したからだ。成瀬は耀子を殺したのではなく、 愛そのものを殺してしまった。そして、この私も愛しようのない女だった。たぶん、博 夫はその愛を殺すために、自分を殺したのだ。(346p)