別冊・幻影城
古本屋で源氏物語の続編を見つけた、その驚くべき話しの概要を書く、という形式。源氏物語は、当然実在の殿上人をモデルに書いたものだが、実は「夢の浮橋」以降続けて3件の殺人事件があったのだという。
薫大将の妻ながら、プレイボーイ匂の宮のことが忘れられない浮船が、宇治川で水死体となって発見された。額はざっくりと割れ、撲殺の可能性が考えられた。ついで、匂の宮の妻の中宮が、同じ様な方法で死んでいるのが発見された。匂の宮は、思いを寄せる女官たちが次々に薫大将と関係していることを発見した、と式部に話す。しかしその匂の宮も、また同じ死に方で・・・。
薫大将と匂の宮の決闘を予告した手紙が、発見され、犯人は薫大将ではないか、という噂が流れた。妻を自殺に追いやった匂の宮憎さだ、最期は決闘で匂の宮を殺したのだ、という。
しかし、薫大将に好意をもつ式部は、検非違使義清の提出した凶器の五鈷を、薫大将をうらむ男の陰謀、と見破る。そして宇治川で死体にできる傷を再現した結果、および浮船等の死霊の「自殺した。」という証言により、薫大将の疑いは晴れ、事件は一件落着かに見えた。
その矢先、清少納言の「死霊は薫大将がやらせたもの。」などの反論で、再び、疑いは薫大将に・・・。しかし式部は、あきらめず「匂の宮が思いを寄せる女性が、薫大将と関係した事実を発見した経緯」に疑問を持った。そしてそれが、性交時にまき散らす匂いであることを突き止め、その可能性のあった唯一の女性を追求する。
「古代人の嗅覚は現代人のそれに比べて著しく優れていた。」という仮説がおもしろい。私もこんな大胆な仮説を立てた小説を書いてみたいものと思う。ポウ、ドイルより900年も前に式部によって探偵小説が書かれたという大洞も感心する。
また作者は源氏物語を非常によく研究しているらしく、最初の源氏物語論が興味をそそるし、全体の文章自体、そのスタイルがまねられている。解決編は読者をミスリードする仮説を2論となえた後、真説を述べるというオーソドックスなスタイル。なお春陽文庫ででた「源氏物語殺人事件」は私の記憶では同じ作品である。(1950
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