双葉文庫
稗田記者は
「駐日P国大使の任を解かれたニーデルン氏はベラ夫人との離婚がうわささ れているが、これは解任された原因の日本のハイ・ホステス、ミス・ヨネコ・フタバとの
スキャンダルのためらしい」
というフランス紙記事を読んで、密かに事実関係の調査に乗 り出す。
問い合わせたP国大使館田村冴子の乗ったバスの爆破事件、大宮壮年病クリニック勤務
の元瀬順子にもとに送られた是正小僧の爆弾小つつみ、取材に冷たい大使館、大宮壮年
病クリニック、それらから診療の名の下に行われる高級官僚、外交官等を対象にした売
春に近い行為が浮かび上がる。
稗田はついに彼らのパーテイへの潜入に成功する。
そして爆発事件の鍵を握る退職自衛官武宮の失踪、高速道路脇での頭を撃ち抜かれた同
人の死体発見。
彼を呼びだしたと見られる武官エルことライプトンの突然の出国。
元瀬順子に強請られたニーデルン氏の防衛策、真相解明を恐れたP国側の証拠隠滅策等
が生んだ一連の事件であった。
当局からの圧力、新聞社の保身体質等により記事にする ことをあきらめさせられた中根記者は
「新聞が上品になりすぎたからいけないんだ。」
と叫ぶ。
解説に「日本版キーラー嬢事件」と「草加次郎」事件をヒントに一億総探偵を納得させ
るにたるホワイダニット(動機探し)ミステリーに仕上げているとあるがその通りと思
う。
事件の語り口があるときは稗田自身、あるときは中間的な立場をとりながら、なめ
らかに描かれている点が素晴らしい。
・いくらでも言い逃れが出来るのですね。病院に個室があるのは当然だ。付添婦がいて、
入院患者の身の回りの世話をして、何処が悪い。付添婦には資格がいらないから、何歳
のどんな美人を雇っても、そこを問題にするわけにはいかない。(281p)
・いっしょに女を買いに行った仲(201p)
・彼は書いて原稿料を貰う。この行為を生理学的に見れば、彼の大脳組織、神経とか細
胞とかを一時的に働かして、是を金に換えたわけです。これと売春と比較して、何処に
違いがあるか、彼女は性器官を一時的に働かせて金をもらった・・・(174p)
・捜査本部側が、(爆破)予告を発表したがらなかったのは、治安確保上の配慮からだっ
た。・・・(149p)