消えたタンカー  西村京太郎

光文社文庫

 遠洋トロール漁船「白川丸」は、インド洋上で航海中原油を満載した50万トンタンカー「第一日本丸」が、炎上し沈んで行くのを発見。宮本船長以下救命ボートの乗った6人を助けるが、残り26人は絶望とみられた。炎上の原因は不明のまま捜査が打ち切られる。
 そして日本に戻った6人が次々と殺されて行く。ただ一人、ブラジルに渡った男をのぞいて・・・。
 しかし十津川警部補等は「船が炎上した際、6人だけが仲間を裏切って脱出したのだろう、ところが一人生きていた男がいてそいつが復讐をしているのだ。」と推定。男を追いつめるが、男は自殺してすんなり事件が終わったかに見える。
 しかし、炎上時間が短すぎる、犯人がどうしてそんなに金を持っていたのか、どうしてあんなにスムースに殺人が行えたか、などに疑問を持った十津川は休暇をとって再度調査を行う。
すると意外な事実が分かった。
 彼らは中東から運んで積んだ原油を横取りし、南アフリカの会社に売却、事件をもっともらしく見せるためダミー船を炎上させた。一味は全員ブラジルに移住する予定だったが妻子のある6人はいったん日本に戻った。しかし彼らは約束の期限がきても家族を説得できなかったため、残りのメンバーが雇った殺し屋が処刑したものだった。

 よく調べてあると感心する。プロフェッショナルな知識が一杯である。

・「事故の原因はなんだったんですか。」
「・・・・第一は、他船との衝突です。第二は磁気機雷にぶつかったという事です。・・・・第三は落雷です。・・・・・どんなタンカーでも、積んである原油が少しずつ気化して漏れているものなのです。従って、一番怖いのが落雷です。」(27p)
・「大丈夫です。・・・千メートルから二千メートルの深さと思いますが、各油槽は、三十八ミリの鋼板で作られているし、一杯に詰まった油が、ちょうど水圧と釣り合うので、強い水圧があっても、油槽がこわれて油がもれてくるということはない・・・」(29p)
・「タンカーの場合は、海面で燃えている油の中を脱出しなければならないので、救命ボートもこんな魔法瓶スタイルで造られているわけです。」(307p)
・第一日本丸は、一日一回、定時に本社に報告を送ってきて・・・」(330p)
・「(洋上給油は)普通、三つの方法で行われています。給油艦と被給油艦が並列で行う横曳法、被給油艦が給油艦の後につく縦曳法、その逆の逆曳法です。」

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