講談社文庫
若宮四郎は、婦人問題研究か家島内輝明氏のインタビューを行うため熱海の蒼海ホテルに新婚旅行列車で有名な「いでゆ」で向かうが、途中見かけた不振なカップルのうち男の方が錦が浦に飛び込む。警察は自殺として処理するが、彼は他殺では無いかと疑う。
失踪したバーの女給由美が、カップルの女の方では無いかと疑ううち、小樽でその叔父長谷川がやはり転落死する。同じ小樽では長谷川の出入りしていた喫茶店あじさいの仲介者、それに警官が一人同じ様な死に方をしていた。
蒼海ホテルを支局員の村田とともに調査すると、今度は名古屋で蒼海ホテルのボーイ春田が死に、さらに関係者の倉田が真鶴で死体と成ったが彼は偽造1000円札を持っていた。
そして真鶴の小さな印刷会社の火事。主人奥田孫三郎の失跡、偽ドル紙幣事件の展開。若宮は背後に大きな旧日本軍特殊部隊を中心とする偽札偽造団の存在をかぎ取る。
そして島内に寄り添っていた謎の沈丁花の女の話などから事件は次第に明らかになる。。
しかし事件は続き奥田孫三郎の惨殺、島内の青酸カリ中毒死・・・
最後に彼は中心人物と見られるタイサこと西島旅館夫婦を追ううち駿河小山で相手の罠に落ちる。そして最後に姿を現した首魁、それはなんとタイサではなく村田だった。
そして彼は自営隊が演習を行う着弾地点に放置されるかに見えたが・・・・・。
やや冗長なところが目立つがそれがこの物語の「なぜだろう。一体どう言うわけだろう。」と読者に考えさせる独特の雰囲気を盛り上げている。犯人が以外すぎるというか、やや唐突な感じのするところも問題。しかし、全体としてみると偽札製造等に関しよく調べてあり、内容も面白い。
カプセルを使っての青酸カリ中毒の話は「クロイドン発12時30分」などに見られるトリック。あじさいが旧日本軍の特殊部隊の名前に繋がっているところは面白い。
塩酸カリをグリセリンに混ぜ、石鹸状に練って固形物にし、軒下に入れておくと自然発火する(730p)はトリックははじめて聞いた。
・いったい、印刷には、凸版と平版と凹版がある。本物の印刷は、この三つの版を併用している。千円札の文字が浮き上がって見えるのは、そこの部分が凹版だからである。(386p)