霧の旗    松本 清張

新潮文庫

 柳田正夫は金貸しの老婆殺した容疑で捕らえられ、死刑の判決をうけるが、妹の桐子は兄の無罪を信じ上京、有名な弁護士大塚欽三を尋ねる。しかし大塚は桐子に金がないことから弁護を断る。やがて正夫は無罪を叫びながら獄死する。桐子の恨みがましい手紙を受け取った大塚が調書を取り寄せ調べたところ、やはり冤罪らしかった。
 桐子は九州出身者の酒場「海草」で働くようになるが、マダムの弟健次が大塚の愛人河野径子の経営するレストランで働いていた。健次はまた径子をも愛していた。しかし健次は、友人で元プロ野球選手の山上に殺される。
 たまたま別件で彼女をつけていた桐子は、事件直後に現場にいたが、そこから出てきた径子の証人となることを誓い、そっと山上の犯行の証明となるライターを隠してしまう。そして桐子の裏切り、径子の逮捕、大塚はなんとか径子を助け、自分の名誉を回復しようと桐子にライターの提供を依頼するが、桐子は冷たく断る。
なおも追及したところ、逆に桐子の罠に落ち、大塚は十分な復讐を受けることに・・・。

 現代人はそれぞれに影の部分を持ち、孤立している側面がある。そのような状況の中での裁判制度とは何か、限界は何かをするどく着いた野心作。