新潮文庫
カミング洋行の石田社長は、知り合いのとび職頭宇田甚平の紹介で取引をした野見山なる男に、6000着の背広をだまし取られた。
倒産し、番頭と細々と商売をしていたが、ある日失踪する。
福井県猿谷卿は戸数4戸の人里離れた秘境、そこの教え子を訪ねた小学校教員笠井早男は断崖から不振な転落死。
笠井は転落の直前に不振な富山の薬売りに出合ったことが分かる。
笠井の友人の新聞記者小宮は必死の捜査の末、宇田の家に残っていた花火が千葉県松戸で売られたもので猿谷卿の矢田一家に結びつくことを見つける。
そして不振な私立探偵井関との出会い。実は彼こそ石田社長の変装姿。
同じ頃警察はトラック部隊などの詐欺事件を追っていたが、小宮の捜査と結びついたとき「故郷を憎みいでた」宇田、トラック部隊の主犯豪田等の関係がうかびあがる。
そして憎みいでる事になった桑子、倉庫に閉じこめられ、女郎蜘蛛を飼う狂人の宇田の父の存在が明らかになる。
トリックそのものはこの小説は完璧とは言えない気がする。
しかし人間の悲しさとか業のようなものが良く描かれ、独特の世界を描き出している。
非常に貧しい家の出身者が苦難の末成功するが、そこに大きな犯罪の影が隠されているという舞台設定は飢餓海峡と同じ。