講談社文庫
東北からでてきた田舎育ちの田代は、日東グラスウールなる武蔵野の中小企業に勤めるが、
持ち前のズーズー弁が治らず、自分の殻に引きこもる。
そんなおり、常務の卿司が赤坂の料亭を出たまま行方不明となり、やがて井の頭で死体となって発見される。田村は直前他社採用試験にに応募したことを卿司に叱責されてい
たことから疑われる。
しかし紙バンドの太さの指摘から、疑問を持った来宮警部は卿司妻登志子、日東グラス
ウールで争っていた柿原常務、直前息子の就職依頼に来た関係会社の稲垣等を洗ううち、事件当時近くで道路工事をしていた現場で秋本という労務者がいなくなったことを発見する。しかし秋本は千住で撲殺死体となって発見される。
稲垣の周囲を洗うと、小さな嘘が見つかる。自家用車のへこみがみつかる。ただ卿司を殺し
て4、5日後に目撃者の秋本を殺したという話は時間関係に矛盾があるし、稲垣には卿司殺しの動機がない。
しかし来宮は秋本の死亡推定時刻が殺した後、武蔵野という郊外の湧水池という低温地帯に放置され、その後千住に運ばれたため、違ったものと考えた。そして発想転換から、実は稲垣の息子が交通事故で労務者の秋本を殺し、その現場を見
られた卿司を口封じで殺したと断定する。
しかしこの影響で職場を解雇され、行き場のなくなった田代は稲垣を刺す。やりばのない田舎育ちの田代の怒り、悲しみといったものがよく描かれている。死体の
低温貯蔵に湧水池を使った点、革手袋のちじみ方の話、すでに労務者の死体があった、と思わせるため、茣蓙をかぶり、倒れていたと言うトリックなどが面白かった。
・カスペルの法則 空気中での死体の腐食進行速度=1、水中では1/2、土中では1 /8
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