この子の七つのお祝いに    斉藤 澪

角川書店ハードカバー

日本の政界の黒幕秦一殻。その影には謎の女占い師青蛾なるものがいるという。ルポライター母田耕一は、青蛾の正体を突き止めるべく奔走し、元のお手伝い池田良子 にコネをつけるが、むごたらしく殺されてしまう。青蛾の生まれた頃の父と母と娘の3人の手相の写しを持つ手相師吉田仙岳も、なぜその手相を持つ男を青蛾が探しているかを知らないうちに、刺殺されて しまう。母田は事件を追ううちにヌーボーと言うバーのマダムが青蛾ではないかと考えるが、母田自身、自殺を装って殺されてしまう。

事件の解明を須藤洋史が引き継ぐ。福島県三春まで青蛾の出生の秘密を追った須藤はついに真相を発見する。
終戦時中国から日本に引き揚げるために、高橋佳哉は、中国人に殺された高橋道夫になりすました上、藤田真弓と偽装結婚をする。帰国後、本妻とのかねあいに悩むうち、真弓は女子を設けるが、赤ん坊は早死にしてしまう。本妻の元に走った佳哉に怒った真弓は、本妻との間に出来た女子を誘拐し、父親に対する復讐鬼として成長させ、死んで行く。
成長した彼女は、同じよう吝嗇の父に犯され恨んでいる古屋麗子とともにバーを開店し、父の行方 を追ううちに秦を知り、政界進出の手助けをする。秦の出世と共に、彼女たちは、古屋麗子が青蛾となり、真弓に育てられた結城あさ代が助手となり、政界を動かすまでになったのだ。そして邪魔者の出現と抹殺。しかしあさ代は、須藤に母と考えていた真弓と自分の手相の違いを指摘され、高橋道夫が悪人ではなかった事を知り、慟哭する。

「横溝正史賞」にふさわしく、すさまじい女の怨念をテーマに情感あふれる筆遣いで描 かれている点がこの作品の特色。
・どうして冬の夜明けは、湿った布団の臭いがするのだろう。母の、すえた体臭。ひび 割れた肌にいつも滲んでいる汗と涙の腐臭。怨讐の言葉を吐き散らすときの口臭。・・・ ・それらがないまざった母の屍臭を、私は嗅ぐ。鉛色の、冬の雲のような冷たい布団は、 夜の寒気がしみついて、まるで黒い凍土だ。そこにポツリと、朱の一点がしたたり、朱 はぼろ布団に吸われて、たちまち消える。だが、朱は執拗にしたたり、やがて繊維の一 本、一本を染め上げ、布団を真っ赤に染めつくす。(冒頭)

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