角川文庫
ホテル戦争での巻き返しをはかるために、画期的な外資との提携に動くパレスホテル社長久住政之介が、七月末に殺された。社長がいた3401号室は、スイートルームでパーラーと内扉の向こうの寝室よりなっており、社長は虫ピンで刺されるようにベッドにはりついて殺されていたのである。鍵がかかっており、現場は言ってみれば二重密室。
この部屋に入る事の出来る鍵は備えつけのルーム・キー、メードのフロアパスキー、支配人のグランドマスターキー、フロントのスペアキーの4種。ルーム・キーは社長の枕元のナイトデスク上にあり、その他の鍵の管理に落ち度がありそうに無い。秘書の有坂冬子は、ルーム・キーを残して前夜7時半頃同室を去っていることが、メードによって確認されている。、社長が殺されたのは午前1時頃である。
有坂のアリバイが疑われたが、実は彼女は警視庁捜査一課平賀高明刑事の婚約者で、事件の晩、彼と一緒に過ごしていたのだ。自責の念に燃え再度ホテルに赴いた平賀は、有坂が社長の隣の3402号に起居していたことに着目する。ついに二つの部屋の鍵とプレートを結ぶなす環を加工して、鍵だけを入れ替え、3401号室の鍵を持ち出し、犯人に与えたとの結論に達した。
十月はじめ、その有坂が福岡のホテルで砒素を飲まされて殺された。有坂には平賀以外に愛する男がおり、彼こそが犯人、自身の証拠を消すために有坂は殺された、と考えると平賀は心の底からわき上がる怒りを覚えた。有坂の残した結婚式の招待状の原稿らしきものから、ライバル会社東京ロイヤルホテルの従業員橋本国男が浮かぶ。
有坂のアルバムから、有坂が九州、四国、東北など飛行場のある場所で、密かに男にあっていた事が分かる。東京ロイヤルの招待状と宿帳の筆跡から男が橋本であることが確認される。福岡犯行当日、現場に到着することが難しく思われたが、数次旅券を用い、ビザ取得にも工夫を凝らして台北に飛び、福岡に戻っていた。東京に戻るときは宮崎を経由していたと分かった。橋本は、さらに自分が東京のホテルで仕事をしていたように見せるため、運転手を使って東京のホテルにチェックインをしていたように見せかけた。
そして橋本は、新東京ロイヤルホテル前川社長令嬢との結婚を間近にし、得意の絶頂にあった……。
全般の4つの鍵トリック、後半の列車ものを思わせる時刻トリック、ホテルのチェックイントリックなどが非常に面白い。文章にも迫力があり、非常に面白い。
* 砒素
* 合い鍵のトリック
* ホテルのチェックイントリック
* 国際線と列車を用いたアリバイトリック
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