創元推理文庫 日本探偵小説全集 1
小酒井不木は39才で他界したそうだ。作品は数は少ないが凄味がある。
痴人の復讐
愚図、のろまとあざけられた目医者の教授と女優の患者に対する復讐談。患者は緑内障で、この病気は重い場合、眼球摘出をせざるを得ない。女優にぐずと嘲られた目医者はさん瞳剤であるアトロピンをさし、さらに副作用で死ぬ可能性すらあるクロロホルム単体による全身麻酔を行い、復讐を遂げようとする。きわめつけは教授のちょっとした錯覚を利用して間違った手術させる。術後眼帯を取った患者が「先生は・・・、右と左を間違えて、見えるほうの眼をくりぬきましたねッ・・・」と叫ぶ所がミソ。
恋愛曲線
私の雪江さんをうばって結婚しようとするA君に贈る、「恋愛の極致を曲線として表現した」「恋愛曲線」・・・
それは死体から取り出した心臓が愛する人の血液を送られると鼓動を再開するが、それを電気信号に変えグラフとして書かせるもの。最後の「愛なき金力結婚を厭い、彼女の真の恋人だった僕の所へ走ってきた雪江さんの心臓は今、まさに停止しようとしている・・・」がどんでん返し。。
愚人の毒
マラリヤにかかった老婦人をその病気を利用して殺害しようとした医者の話し。手段は亜砒酸を治療薬に混ぜると言うもの。二人の息子、婚約者等を疑わせ、最後に医者に持って行くところがおもしろい。
闘争
ある実業家の自殺をめぐる精神医学界の大物、二人の争いを描く。自殺した本人がなぜ「あの自殺は他殺の可能性がある。」との手紙を書いたのかがミソ。