無惨・血の文字・紳士の行方
無惨(創元推理文庫 日本探偵小説全集 1)
築地字海軍原の川中にうかんだ男の惨殺死体、犯人も被害者も分からず取っつき用のない事件に見えた。しかしベテラン探偵(刑事巡査)谷間田は、被害者がつかんでいた髪の毛から、ちじれた髪の毛の女、賭場が関係しているなど状況証拠を積み上げ、お紺という女郎がおかしいと目星をつける。一方若い大鞆は、西洋式の科学知識と論理を信奉する。ちじれた髪の毛から犯人は弁髪の中国人、刀の傷からそれも若い男、毛を蒸気に当てた所、染毛であったことが分かり白髪の男、頭の陥没した傷から独楽をもつ子供のいる家庭を持つ男と推定して行き、弁髪をした中国人兄弟を犯人と被害者と断定する。大鞆の報告の終わった頃、谷間田もお紺の証言から同じ犯人と被害者に行き着く。
明治22年に書かれた日本の草分け的探偵小説。さすがに代表作と言われるだけあって良く書かれている。「若造に何が分かる。」と言う考えの谷間田と「こっちにはこっちの考え。」とつっぱる若い大鞆の会話は、まるで掛け合い漫才みたいで楽しい。論理的なつめもシャーロック・ホームズ物やソーンダイク物に決して劣るものでは無いと思った。
紳士の行方(別冊幻影城・黒岩涙香)
パリで豪商塩田丹三が突然消えてしまった。予審判事は捜査を探偵散倉老人に依頼する。追跡調査の結果、塩田はたばこを買うおりに財布に5000フラン程度の金を見せ、最後に虎太なるあまり評判の良くない男に細工物を注文し、消えた。当然のごとく散倉は、虎太夫婦を逮捕し責め立てるがどうも様子がおかしい。二人の証言、旬日を経ずして塩田商店が倒産したこと、塩田に多額の生命保険がかかっていたことから事件は予期せぬ方向へ。
出だしの「不思議、不思議、煙の如く消え失せて更にゆくえの知れざる一紳士あり。」という文章はすばらしいと思った。ガボリオーの作品の翻案らしい。
血の文字(創元推理文庫 日本探偵小説全集 1)
紳士の行方と同様、無理に日本化しているために、舞台はパリだがそれらしくない。
白髪の老人が殺され、血で書かれたMONISの文字。 警察はこのダイイングメッセージから犯人を甥の藻西と判断し逮捕したところ、藻西はあっさり犯行を自供し、事件は解決かと思われる。しかし疑いをもった目科探偵と作者が調べた所、犯人は藻西の美貌の妻倉子の恋人生田で、藻西は妻の犯行と考え、素直に自供したものだった。
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