光文社文庫
二階堂日美子は、高校時代の友人、宮沢昌江の誘いで、三月三日、京都へ枕草子歴史ツアー
に出掛ける。彼女の夫は鎌倉署の警部だが、昌江が日美子を誘った理由に注目する。
その夜、鎌倉のマンション「源氏」で火災が発生、3階の風呂場から新進作家円谷れい子の絞殺死体が発見された。さらに耐火金庫の中から、何やら暗号めいた枕草子第一段の一部を4字ごとに区切って書いたメッセージと、ツアー参加者田名鳥悦子が差出人になっている封書、葉書が多数発見された。
日入りは てて風の 音虫の音 などはた いふべき にあらず
夫からの連絡で、悦子に聞くとれい子は高校時代の友人と言い、その死をつげると真っ青になって自室に引っ込んだ。そして二日目の夜、ホテルの3階自室で絞殺されてしまった。昌江から「円谷から今度の旅行には気をつけてくれ。」と言われて、日美子を誘った、と告げられる。一人残留した日美子が、夫と連絡を取ると、火災の原因が金属ナトリウムに水を掛け、石油に引火させたものと分かった。悦子の夫の田名鳥浩が駆けつけ、悦子の不倫をほのめかす。
日美子は、東京に戻り、ダイイング・メッセージの解読に取り組む。4字づつくぎって漢字とひらがなをモールス信号に見立ててみたら、四方陣と対応させてみたら、漢字だけで何かをあらわしていないか、窓あけ方式ではだめか、など考えるがうまく行かない。ただ、いふべき
にあらず、は取り去っても良いのではないか、何か親しい人にだけ分かる物ではないか、などと考えるに至った。
日美子は、葬式の席にかってきた電話に偶然出て、悦子の親しい友人に芦垣トモミという女性がいることを知った。ところがそのトモミも、雪の金沢で絞殺されてしまった。彼女もれい子と同じメッセージを持っていた。
捜査当局は、鎌倉や京都の殺人で犯人が壁を伝って窓から侵入したらしいことを発見した。そういう特殊訓練をしている組織が関西と関東に一つづつあった。名簿をチェックした二階堂は意外な名前を見つける。さらに二階堂は、ダイイングメッセージの漢字と重複している文字を取り去るとその名前のアナグラムになっていることに気がつく。
最後は型通り、犯人と日美子の対決、夫の助太刀........
話として問題が無い訳ではない。
(1) なぜ、生前にれい子やトモミ将来の殺人犯を予測し、ダイイング・メッセージを用意できたのか。
(2) 犯人はなぜ3人も殺したのか。それだけの動機が本当にあったのか。
しかし暗号トリックの比較的手軽なミステリー小説と考えれば、それで十分に楽しい。
同じような暗号の解き方を 扱ったものに中津文彦「黄金流砂」、長田順行「暗号」がある。
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