角川文庫
商産省のストライキで組合の情報が当局に筒抜けになっていた。犯人は鶴飼と彼の内縁の妻細川と判明した。その鶴飼が商産省の非常階段の踊り場で煉瓦で殴り殺された。
組合裏切りに対する報復ではないかと考えられるうち、細川と起居を共にしていた二階堂と言う
女性が殺され、こちらは誤認殺人ではないかと疑われた。ところが犯人と目された亀田
が交通事故死し、事件は刑事訴訟法339条「被告人が死亡したときは決定で控訴を棄
却しなければならない・・・。」に従い、終わりを告げようとしていた。
しかし捜査一課の倉田警部補は、納得せず休暇を取って捜査を開始。鶴飼が持っていた名刺の裏に書かれていた都道府県名は郵便局で使うひらがなに対応しており、細川が鶴飼
を呼び出したものと推定。さらに細川は妊娠しているとしていたが、流産していて階段
上の犯行も不可能ではなかったこと、偽装妊娠を同室の二階堂に寝間着の汚れから見破られてしまったこと、細川と鶴田の関係は、鶴田の組合裏切りと共に経済的に苦しくなり、さめていたこと、細川が一緒に仕事をしていた男に酒を飲ませ、日時の感覚を狂わせて鶴飼殺しのアリバイを作っていたこと、亀田が自殺したのは組合の悩みからではなく、結婚を約束していた女性から裏切られたことなどが分かる。そして細川が「招かれざる客」としてこの世に生まれてきた暗い出生の秘密・・・
最後に二階堂殺人の凶器がドライアイスで、犯行後、砕いてストーブに投入して隠滅し
たものとわかり、二つの殺人事件の犯人は細川であったと判明する。
ストーリー展開を事件と特別上申書にわけて書いているところが興味を引く。全体として
トリックが凝っていて面白く、本格派推理小説の醍醐味が味わえた。
・結婚就職主義の女性は、当然大会社を希望する。・・・大会社というのは経済力豊かな男性という意味で、競争率も激しい。恋愛は就職試験であり、失恋はそれの失敗であ
る。だから現代の失恋は、過去の恋煩いのような精神的苦痛を伴わない。そのかわり自
信喪失の打撃は大きい。愛する男を失ったという心の傷より、次の就職試験に対する影響が、失恋による大きな損害なのである。(156p)
・赤煉瓦の比重 約1.8・・・・2.7キログラム
氷の比重 約0.9
ドライアイスの比重 約1.6(245p)
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