名探偵なんか怖くない    西村京太郎

講談社文庫

 名探偵シリーズ第一巻。
 財産家の佐藤は、あの未解決の3億円事件をそっくり再現させて、それを世界の名探偵に推理させようと酔狂な計画を立てる。招待された探偵はメグレ、ポワロ、クイーン、それに明智の4人。お膳立てを佐藤の指示に従い神崎が、通訳を三島が行う。
 佐藤が土地を買うための金3億円足らずをを運ぶと知った村越は、神崎等にそそのかされて、府中刑務所近くで佐藤を襲い金を手にする。そして名探偵たちの推測通りマンションと車を買い、金は自室の金庫に保管し、金城という若い女を囲う。
 しかしクリスマスの夜、村越が自室で殺され、金庫の金がなくなり、停電騒ぎの内に金城が襲われ、気がついたときにはダストシュートの前に倒れていた。3億円はダストシュートから焼却機に送られ燃えてしまった。
 警察は、村越の部屋が盗聴されていたことを知らなかった金城の犯行とするが、名探偵たちは殺された男は替え玉、村越=神崎と指摘する。神崎は青酸入りジュースを飲んで自殺し、事件は解決する。
 しかし、名探偵たちから後に送られた手紙によれば、佐藤が税金対策のために、回収処分漏れの3億円をそっと入手し、3億円事件に似せた模擬事件を起こし、あたかも金を失ったかのように、見せかけたものだった。
 4人の名探偵を登場させ、昔の作品を思い起こさせながら事件の解明に取り組むという巧みな構想、そしてその中にさえる作者のユーモアが素晴らしい。

・警察から隠れる最上の場所は刑務所です。警察というのは何のために犯人を捜すか。それは、刑務所へぶち込むためです。だから、すでに刑務所には行っている人間は調べない。(68p)
・それほど沢山の動機はない。恐怖と利益と異性関係だ。そして今度の事件は、3億円の大金しかないではないか。(142p)
・(アブナーは)こう言っている。「普通の犯人は犯行の証明を一つも残すまいとする。それより利口な犯人はワラ人形を自分の戸口にたてる。さらにいっそう賢い犯人はワラ人形を他人の戸口にたてる。」(221p)
・(テープレコーダーは)みんながこの部屋に飛び込んだとき、犯人が素早く拾い上げてしまったのです。(250p)

r991204