魍魎の箱           京極 夏彦

講談社ノベルス

ドグラ・マグラを思わせる奇怪な小説だ。
700ページ近い大作で、話しは複雑だが、
1 美馬坂医学研究所
人間は脳が中心でそのほかは脳の乗り物に過ぎぬ、ならば脳以外を人工の物で置き換えれば永遠の命が出来るのではないか、と研究に没頭している美馬坂博士の研究室。
2 久保竣公
新進気鋭の作家。しかしその「筺の中の少女」は実体験にもとずいているのではないかと考えられる。
3 お筺さま
筺屋のあととりがはじめたあらゆる魍魎を箱の中にとりこめるという新興宗教。
4 楠本家
人形師の母君枝と頼子の家庭。頼子の親友に柚木加菜子がいる。
等が中心でこれに探偵役の京極堂、頑固刑事の木場、売れない作家の関口、カストリ雑誌記者鳥口等がからむ。
話しはある夜、頼子とでかけた加菜子が鉄道に飛び込み死にかかる。
加菜子が実は財閥柴田耀弘の唯一の相続人らしいことがわかり、木場等が捜査に乗り出すと、彼女は美馬坂医学研究所に移され、そして衆人環視の中突然消えてしまう。
そして妙な身代金請求書・・・。
そのころ妙な手と足だけが発見されると言うバラバラ事件が相次いでいた。
そして現場近くで目撃された黒い手袋の男。
一方でお筺様という宗教がはやり、バラバラ事件の犠牲者がみんなこの宗教に加入していた事が分かる。
そして頼子が行方不明になる。
京極堂等は、お筺さまを影で動かす人物を久保竣公と見破り、自室を捜査したところ、筺に入った頼子の死体が発見された。
バラバラ事件の犯人は久保で一件落着と思われたこの事件が久保自身の腕や足が発見されたことで振り出しにもどった。
実は脳以外を機械に変えることによって人体再生を試みる美馬坂博士は実験のためにお筺様を通じて知った若い女性をバラバラにしていたが、助からないと分かった加菜子をこの方法で再生させようと試みたり、柴田耀弘から金を引き出そうと誘拐劇を演じるなどをする。
そして最後には実は我が子であった久保竣公まで実験材料にすることに・・・・。
この作品の魅力はなんといっても作者の分身かとも思われる京極堂の蘊蓄と独特の哲学?だ。


・ クラインの壺か、メビウスの輪か。はたまたウロボロスの蛇か。(164p)
・ 宗教者・・・・最初のペテンの部分も、次の当たらない未来予知も、その次の加持祈祷も、    すべてが方便だ。・・・・信者になってしまえばペテンも何もあった物じゃない。
占い師・・・・未来予知が仕事。当たろうが当たるまいが勝手。過去のことは意味がない。  
霊能者・・・・悪い障害を取り除く事にある。取り除けなくてもその未来に対し責任はな    い。壺や判子を売る。失敗しても信心が足りないですむ。
超能力者・・・分からないことを言い当てる。タネがばれないことが必要。福来事件。    (180ー190p)
・魍魎についての議論(350p)
・事件は人と人・・・多くの現実・・・・の関わりから生まれる物語だ。、ならば、物語の筋書き・・・事件の真相・・・もまた、かかわった人の数だけあるのだ。真相はひとつというのはまやかしに過ぎぬ。(384p)
・動機とは世間を納得させるためにあるだけに過ぎない。犯罪など、こと殺人などは遍く痙攣的な物なんだ。まことしやかにありがちな動機を並べ立てて、したり顔で犯罪に解説を加えるような行為は愚かなことだ。(474p)
・馬鹿め。死人に何が伝わる。(614p)