新潮文庫
この短編集を読んで、作者の発想の原点を探って見たくなった。
そこで作品を自分なりに分類することを試みた。
1 現実性のあるブラックユーモア型
このジャンルに入る作品は、書き方によっては普通の推理小説になる作品である。
それをあえて乾いたタッチで軽やかに書き進めている点が、この作者の魅力と思う。
保証は、月賦の掛け金が払えない場合に備え、販売者が購買者に対し生命保険をかけておき、いざというとき殺すもの。
あるスパイの物語は、世界が平和になったスパイが自分たちの職域を守ろうと今まで敵国だったスパイとの連帯を模索するする話。
信念は、会社の金をいつか横領しようと考えて入社した社員が、大金を預けられるために、信用をえようと努力した結果、出世してしまった話。
陰謀団ミダスは、強盗などのやらせの事件を発生させて、騒ぎを作り出し、宣伝効果をねらう話。
ねらった弱みは、弱みを握られた男が、自分の会社へ脅迫者が盗みに入るのを手助けし、その上前をはねる話。横溝正史賞の「ノーペイン・ノーゲイン」に同じ様な話があった。
古風な愛は、男が上流家庭の娘と恋に陥いる。しかし娘は実は不治の病。相手の親と相談して心中してやり、娘を幸せな内に死なせてやる話。
金の力は、盗んだ金を取りに行くが、そこは今、精神病院。男は、患者にされ、金の夢にうなされる。ついに決心して金を取り出し、燃やしてしまう話。
長生き戦争は、製薬会社にモルモットの長生きを競わせ、それをテレビ放映する話。最後にその薬を飲んで見た結果がオチ。
2 こんなものがあったら・・・どらえもん型ブラックユーモア
こんな機械があったら面白いという考えから発想しているように思う。ただお子様向けになっていないのは、そこに現代を風刺している要素があるからだろうか。
味ラジオは、口の中に仕込んだラジオが、食べたものに味付けをしてくれる。ある時、放送局が故障して・・・。
人間的は、人間味のあるロボットを作ろうとするが、ずる休みを覚えてしまった話。
妄想銀行は、妄想を売り買いする銀行の話。恋人に間違えて「自分が馬だ。」と思うカプセルを与えてしまった・・・・。
3 宇宙型で宇宙を旅するとこんなことがあるかも知れないと言う話
これは空想小説、ただむやみに科学的に正面から取り組んでいないところが面白い。
繁栄への原理は、宇宙へ進出するより生活環境の改善に取り組んだ惑星の話。
遭難は、見知らぬ星に不時着した宇宙船の男が、救助船が来るまでに妙な装置を見つける。好奇心に駆られて探索、さびしさや極度の退屈に耐えられた話。
黄金の惑星は、SOSで到着した惑星が金の固まり。しかし欲に駆られて、脱出できぬ羽目に・・・。
宇宙の英雄は、緊急信号で遠い惑星に駆けつけるが、彼等は単に退屈だっただけ。
博士と殿様は、タイムマシンで過去に移った博士が、おいしいもので殿様をつるが、鮎の塩焼きと、エビの活き作りで失敗する。
4 おとぎ話だがイソップ的要素のあるもの
大人の童話と言った感じの作品。阿刀田の短編にも似たようなものがあったように思う。
女神は、人形のようにきれいになりたかった女の子が、女神に頼むと、そのようになるが、人形になってデパートに飾られる羽目になる話。
海のハープは、恋人と別れた女が、男を誰でも引きつけるハープを海辺で見つける。しかし元の恋人が戻ってきたとき、ハープを海に返す話。
鍵は、ある男が幸運の鍵を見つけるがあうところがない。一生探し続け、最後に男がその鍵にあうドアを作ると女神が現れる話。
魔法の大金は、悪魔にお札をたくさん作ってもらい、銀行に持ち込むが、番号が同じで疑われる話。
5 4にややにているが、未来小説でイソップ的要素のあるもの
住宅問題は、素晴らしい住環境が達成されるが、すべてがコマーシャルの対象になってしまう話。
半人前は、死神の半人前で、これにつかれるといろいろな危機に陥るが、死にはしないという話。
変な客は、宝石店に強盗が入る。チョコレート製のピストルを突きつけられた主人が、非常ベルで警官を呼ぶと、その間に男はその間に食べてしまい、脅しの証拠が残らない。こう言うのが2度続き、3度目は・・・・・。
どれにも属さない感じのするものに「とんでもない奴」がある。 これは一種の貨幣の起源に関するおとぎ話。