日本の黒い霧    松本清張

文春文庫

日本がアメリカに占領されていた頃、様々な不可思議な事件が起きた。掘り下げてみると占領者としての米国の都合、世界情勢の変化が投影され、真相解明を難しくしている。

下山国鉄総裁謀殺論
シャグノンの推薦で初代国鉄総裁に就任した下山だったが、首切り問題について独自の立場をとろうとしたため、CIC情報機関が拉致、殺害の上線路上に捨てたとの見解。

白鳥事件
昭和27年。立身出世主義者白鳥警部が何者かに撃たれ、警察は共産党の犯行としたが、犯行に使われた銃、自転車等に疑わしい点が多く、CIC内部の風紀紊乱にも目を付けていたため、彼らに消されたのではないかという議論も成り立つ。

ラストヴォロフ事件
昭和29年。ラストヴォロフ二等書記官が消えてから1年、行方は杳として分からなかったが突然の米国国務省主催の記者会見。講和条約を結び、独立国となった日本の主権は無視された訳だが、日本の側にも多くの協力者がいた。

革命を売る男・伊藤律
捕まればすぐに仲間を売り、転向するを繰り返した男、伊藤律。最後は徳田球一等とともに地下に潜ったが、徳田の死とともに、宮本の時代に移り、消えてしまった。

征服者とダイヤモンド
日銀地下には現在16万カラットのダイヤが眠っているがこれは戦前国民に供出させたもの。しかし実際はこの数倍あったはずだ。どさくさに紛れてくすねたのはアメリカ軍関係者か。、あるいは旧日本軍の残党か。

帝銀事件の謎
昭和23年。軍関係の犯行と考えていた警察が、突如素人の平沢の犯行と考えた訳は何か。米国のために役立つと考え、あえて温存した石井部隊を守るという米国の考えが投影されていたらしい。

推理・松川事件
昭和24年、福島県で起きたこの事件は玉川警視等の捜査で国鉄および東芝の共産党分子による犯行として起訴されたが、自白が主体で物的証拠たるバールや羽目板は怪しい。追求して行くとアメリカ軍関係者の姿がちらつく。

謀略朝鮮戦争
昭和25年。最初は北が有利だったが、戦線がのびきったとき米国軍の仁川上陸、形成逆転、しかしなぜ北朝鮮軍は一夜にして消えたのか。最後は中共軍がでてきて一進一退。その間に戦争をアジアに拡大しようとしたマッカーサーが解任される。