虹へ、アバンチュール 鷹羽 十九哉

文芸春秋ハードカバー

この作品を書いたとき作者は55歳だったそうだが、感受性としゃれを感じさせる、み ずみずしい作品に仕上がっている。作品中に引用される詩やことわざ、例文なども生き 生きとしていて独特の中年遊び人オートバイ野郎の世界を作り出している。

フリーのカメラマン松平菊太郎は九州バイク一人旅を楽しんでいたが、天草の民宿で岡 村ミドリと名乗る美人と知り合う。そして五箇荘でどこかのじいさんといちゃついてい るところを見つける。しかし、彼女は阿蘇の麓で「コマンド」の言葉を残して、焼き殺 されてしまった。おれは師とあがめる斑出四三、婚約者の伊藤マリ子と事件の究明に向 かう。
九州宮崎の田村財閥、そこの使用人根岸留作は、長男田村清一とそっくりだった。特高 隊員になった二人の内、留作だけが生き残るが、留作はこれを機に清一になり通し、田 村家を乗っ取ろうとする。しかしそれを見破った清一の許嫁秋月久子を、駒形堂(コマ ンド)で殺してしまう。岡村ミドリこと鈴木文子は、その娘で根岸留作いまは2代目田 村与左右衛門に復讐を試みたが、返り討ちにあってしまったものだった。
小説はこれにさらに使用人西谷梅吉の赤ん坊取り替えによる田村家乗っ取り、取り替え て乗り込ませた赤ん坊と自分の娘の恋等がからむ。
松平、斑等は留作を追いつめるが、最後は罠に陥り、危機一髪、そこに関係者がかけつ け、大団円というストーリーになっている。

・鎌倉から室町時代にかけて、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前、越前にしか窯がなかっ た。これを六古窯という。戦国時代、瀬戸の工人の一部は動乱を避けて美濃に移った。 安土桃山時代・・・茶器全盛の時代、といえる。我が国の陶器づくりが飛躍的に進展し たのは、豊臣秀吉の朝鮮進攻以後である。この文禄・慶長の役に従軍した九州の大名達 は、朝鮮の陶工たちを伴って帰国し、自領に窯を築かせた。黒田長政領の高取焼、松浦 鎮信領の平戸焼、細川忠興領の上野焼と八代焼、島津義弘領の薩摩焼・・・(毛利輝元 領の萩焼・・)(47p)
・外向型(ずーずーしい、ということ)、時局関心性があり(新しいもの好きのオッチョ コチョイということ)、時として権威に立ち向かう正義感(かしこくない、ということ) ・・・(75p)
・防空壕を過信して中に閉じこもったきりでいると、蒸し焼きになる。外の状況が見え ないと言うのも欠点である。・・・殺人(209p)
・若さの尺度は、どれだけ冒険することを恐れない心があるか、および、どれだけ好奇 心があるか・・・・(214p)
・可愛い鶏が、遊んでいる。その首にナイフを突き立てる。白い羽根が鮮血で真っ赤に そまる。逆さにして血を絞りだす。それを熱湯に漬け、羽根をむしり取る、腹を一文字 に切って内蔵を取り出す。・・・・これの出来る娘が、日本に何人いるだろう。アメリ カではこれのできない娘は結婚する資格がない。アメリカ人は、その本性が残忍なので ある。(242p)
・ホテルに入っても、今度は電話しない。ソク、播種作業に励む。間引きなどはしない。 十月十日の月満ちて、堂々と出荷する。・・・・そしたらこれを促成栽培と呼ぼう。( 255p)
・家族とは便宜上共に生活するものの集団です。必要あればいつでも離れ去ります。そ れなのに、家庭に魂の安息所をもとめ、家族に魂の連帯を求める・・・・私にいわせれ ばそれは甘えです(304P)