集英社文庫
秋葉産業の秋葉茂一社長夫妻殺害事件で渋沢電気の工員古沢克彦が逮捕された。
現場の状況、当時克彦が欲しがっていた300万円が自宅マンションから出てきたことから、克彦は犯行を否定するものの有罪は確定的。
そして克彦の獄中での自殺。
しかし兄の無罪を信じる妹の秀美と瀬能弁護士が調査を開始。
克彦が嵌められ、犯人は社長と折れ合いの悪かった息子の秋葉雅文専務の愛人岩佐美智子、その弟の透らしい。
しかし証拠を集めるうち透が自宅アパートで殺され、側には秀美の姿。
秀美は逮捕されあっさり犯行を自白する。
克彦が裁判途中で自殺したのだから再審請求は出来ない、うらみをはらすと共に間違った警察やマスコミを告発したかったと言う。
しかし不審に思った瀬能が詰めて行くと、克彦は信楽に住む葛原彩子と不倫をしており、それを種に彩子が透から強請られていたこと、その金を克彦が算段しようとしていたことを突き止める。
2度目の殺人の犯人は平和な家庭を守ろうとする彩子で秀美は彼女を庇っていたものだった。
ポイントは克彦が逮捕された時点で、マスコミや世間からあたかも犯人のような扱いを受けることである。
実際は『裁判で有罪の判決が出るまで無罪』なのだが、法のたてまえと一般社会の間に大きなずれがある。
作者はこれをいいたかったようだ。
裁判物で堅い感じを予想するが、しっかりした筋立て、すっきりした感動的な文章は一気に終りまで読ませる迫力がある。
* 裁判で有罪の判決が出るまで無罪
* 一事不再