ノーペイン、ノーゲイン    山本 甲士

角川書店ハードカバー

誰の立場で書くか、どのような順序で書くかという点で工夫が凝らされている。作者の ボデイビルに対する知識披瀝も興味深い。
第一部・・おれは鍵屋の八戸虎男。鍵屋の収入を補うため泥棒稼業、しかしスポーツク ラブシェイプスに入り20万円を盗んだが、危うく見つかりそうになり足を洗う。その 後ボデイビルにこるが、所属のジムが改築することになったため、そのシェイプスに通 い始めることになる。一方新聞報道で盗まれた金が420万円であることを知り、上前 をはねた男に憤りを覚える。
第二部・・おれは虎男の親友でシェイプスに通う与賀。ある日虎男がベンチプレスをし ているときにバーベルを首に落とし窒息死したとの報道。私はオカマの神園真澄の協力 を得て、これは事故ではない、殺人だとの確証を得て調査。400万円を盗った男が経 理課の水之江であり、その400万円は虎夫に取り替えされていたことを知る。それで はと水之江が逮捕されるが、彼は金を盗ったことは認める物の、殺人については頑強に 否定する。
第三部・・おれはシェイプスの支配人蓮池。神園なる女性(?)におれは取引を持ちか ける。「あなたはライバルの懐刀である水之江をのぞくために長い間準備をしていた。 虎男からの電話に出たが、おかげで400万円を払わされる一方、真実を知ることになっ た。そして虎男がジムに通っていることを知った。そこで虎夫のベンチプレスを助ける ふりをして、これを殺し、かねて用意の水之江のストラップを現場に残し、彼に罪を着 せようとした。」私は真実を暴露され、真澄を襲うが間一髪駆けつけた与賀に倒される。

・上流から木の葉をたくさん流すと、ことごとく妖刀に吸い込まれるように、スパッ、 スパッと恐ろしい切れ味を発揮する。名刀は・・・木の葉はまるで生き物のように刀を 避けて通るではないか。・・・・・真の完全犯罪とは、マスコミも騒がず、警察も捜査 に着手しない、つまり犯罪が表面化しないことなのではないかな。(15p)
・うまいことを行ってもう一足買わせる気だな・・・眼鏡のコマーシャルでビジネス用 と、カジュアル用などを使い分けましょうと言ったのを見かけるが、あれと同じ事を言 いたいのに違いない。(190p)
・相続の限定承認(209p)
・人間は自分の思いこみに基づいて事実を解釈してしまう(267p)