大いなる幻影    戸川昌子

講談社文庫

古色蒼然としたK女子大アパート、そこには他人を寄せ付けない老嬢たちがひっそりと暮らしていた。
大塚仲町の交差点で女装をした男が車にはねられて死んだ。その男を待っていたのは実は上だちか子だった。彼らは少し前、トランク詰めにした子供を地下の浴槽の割れ目にコンクリートとともに流し込んだ。
クラフトという米兵と日本人の女の間に出来た子が誘拐された。子はかえってこなかった。二人は離婚し、クラフトは国に帰った。
宗方豊子は夫の遺稿を出版するとお高く止まり、日夜努力しているように見えた。しかし管理人の田村がマスターキーを使って忍び込むといたずらがきの山だった。
マスターキーは乞食同然の暮らしをしている石山則子がうばった。彼女はヴァイオリンを教えている矢田部寿和が昔恩師からヴァイオリンの名器を盗んだらしい事をかぎつけ、そのキーを使って寿和の部屋に侵入、その名器を盗み出した。
昔の教え子に手紙を書くことに生き甲斐を見いだした木村よね子は、クラフトの女を発見、上だちか子が誘拐犯では無いかと思いだす。そしてちか子を脅迫し真実を探ろうとする。
アパートに三霊教なるあやしげな宗教がはやりだし、「おさしず」がことごとく当たってしまった。宗方豊子の原稿の内容は言い当てたし、ヴァイオリンは発見された。そして嬰児の死体の在処の予告・・・・。
上田ちか子の自殺、矢田部寿和の変死。そしてアパートの移動工事。
最後に一番古参の東郷管理人の告白。「私はスペアのマスターキーを持っていた。それで各人の部屋に忍び込み、みんなの秘密を知ってしまった。弟は一寸法師の巫女と一緒に三霊教なるおかしな宗教を始めたが、私はこれを成功させてやりたかった。」
最後にクラフトの子は実はアメリカに父と共に帰っており、上田ちか子が殺したのは生まれてきた奇形児であったことがわかる。