ケイブンシャ文庫
冬のパリ、セ−ヌに近い地下鉄駅の出口付近で日本人ガイドの他殺死体。パック旅行に
行き、彼をガイドにやとっていた母からの連絡で事件を知った藤林章一郎はパリに急遽
飛ぶが彼が昔の留学時代の親友吉屋と知って驚く。吉屋は知り合いと始めたエレ−ヌと
いう妻をえたもののガイド会社に失敗し、落ちぶれていた。彼は前日藤林の母と会うと
偽って金を工面しに小さな画家の集まりに出掛けていた。さっそく藤林が尋ねるとそこ
には藤林の初恋の女性亜美、助手の佐世、売りだし中の画家二朗。そして翌日二朗の死
体。
佐世は吉屋を恋していたが吉屋は亜美からエレーヌ、そして佐世を金銭面で利用するこ
とのみ考えていた。それを知った佐世が吉屋を刺し、さらに強請りを掛けてきた二朗を
処分したものだった。フランスの1フランに100円硬貨がにているところに目をつけ
たアリバイくずしが面白い。
しかし全体としてのまとまり、期待していたパリ警察の対応、話の進め方とも今一歩と
言う感じがした。また「しかし藤林自身の軟弱な生き方に較べれば、二人は何層倍も逞
しく、強く生きていた。」とあたかも彼等の生活態度を賛美するような書き方をしてい
る点は必ずしも首肯出来ない。