中公文庫
「パリと東京を舞台にした十津川シリーズ」というので買ってみた。
ソルボンヌ大学で学ぶ水原は、パリは始めてというふれこみの資産家の谷口一家のガイドをした。しかしその夜ホテルから谷口が消え、しばらくして色ずき始めたマロニエの影を水面にうつすサン・マルタン運河に、死体となって浮かんだ。谷口のパスポートを所持していたアラブ人が逮捕され、事件は落着したかに見えた。
水原が次にガイドを依頼された客は十津川と名乗ったが、ガイドも終わる頃になって日本から来た警部と知りびっくりする。十津川と共にパリ警視庁で小メグレ警部に会い事件の重大さを知る。谷口は日本の暴力団K組と繋がっており、パリには何度も来たことがあるはずだ、というのだ。水原は友人で俳優志願のジャンと事件を追うが、脅しや嫌がらせが入った挙げく、ジャンがニースで行方不明になってしまう。
そのジャンが谷口と同じようにサンマルタン運河に浮かぶが、死体には電気ショックや自白剤の注射による拷問をうけた後があった。小メグレによれば、これはフランスの右翼軍事組織OASがアルジェリア民族紛争のおりに使ったやり方だ。事件はどうやらフランス国軍が開発したばかりの暗闇でも撃てる暗視装置付きの狙撃銃を、日本の暴力団が密輸入しようとしていると言うのだ。国軍が関与しているとなると動きにくい。しかも金の受け渡しには日本大使館員まで関与しているとあって、事件は大掛かりになる。
<明日夜、ブローニュの森で、狙撃の予定。注意せよ。>なる匿名の手紙に基づき、パリ警視庁はブローニュの森に非常線を張る。しかしその警戒の中で密告した娼婦フランソワ・ミヤギが暗視装置付きの狙撃銃で撃たれる。彼女は意識不明ながら命を取り留め、S病院に運び込まれた。彼女の口から全貌が漏れることを恐れて、犯人たちは必ず病院を襲う、と厳しい監視下に置いたが、セーヌ河から通じる下水道を使って襲撃してきた。果たして犯人を追いつめられるか。
一方日本に逃げ帰ったK組組長は下関から韓国経由で出国しようとするが、十津川、亀井等がはげしく追う。
推理小説世界大会に参加した作者が非常に短期間で書き上げた作品という。しかし、物語に一本筋が通っており、進め方も軽快で素晴らしい作品に仕上がっている。特に導入部で水原を活躍させるところがうまいと思った。
(1989 59歳)
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