講談社大衆文学館
旧満州の大連で金満家の白系ロシア人ペトロフが自室で射殺された。
彼には兄方の甥アントン、弟方の甥ニコライ、アレクサンドルがおり、アントンは中国人美人郭運環と結婚、アレクサンドルはラトビア出身のナタリアが恋人だった。
しかし、ペトロフは純潔ロシア人主義を信じ、彼等の中に反対し、強行すれば遺言の書き換えによって遺産を与えない事にすると宣言していた。
鬼貫刑事が事件の解明に当たる。
犯行時間に、アントンは新京から大連行きの列車に乗っていたし、ニコライ鳥類収集が趣味では水師営に行っていたし、アレクサンドルはナタリアと旅順観光をしていたという。
しかし、ニコライのアリバイを唱える老人が太陰暦と太陽暦を取り違えていたことからアリバイが崩れ、拘引される。
次ぎにニコライがアレクサンドルが犯行時刻に現場に行ったのをかばうために証言を重ねた事がばれ、アレクサンドルが拘引される。
しかし鬼貫は取り調べの結果アレクサンドルも無罪、11人の証人のいるアントンこそ怪しいとの言葉をナタリアに残して病気治療のため満州を去る。
そしてナタリアの新教から大連に向かう列車に実際に乗ってみての調査が始まる。
数々の証人を作って、鈍行で行ったと見せかけ、途中から急行に乗り、ペトロフを殺し、また鈍行に乗るという手口。
しかも特色となる市松模様のバッグは鈍行に残したままにすれば十分に偽のアリバイが成立する!。
この点をもとに追求すると、逃げ出したのはなんと郭運環だった。
アントンは実は金に困っていた。郭運環はアントンとの生活を実現するため叔父に金をだすよう交渉に行ったが争いとなり撃ち殺してしまった物だった。
いわゆる列車トリックの初期の作品である。
しかし異国情緒があふれ、今読んでも非常に興味ある作品になっている。