新潮文庫 講談社の「ライン河の舞姫」を改題
「ライン河畔の古城「ライン・ローゼンブルク」を、デユッセルドルフの工場とセットで売りたい」と当主ゲルハルトが希望。
友人の外務省の若き事務官、京田の仲介で、日本の政財界人を迎えて仮面舞踏会が開かれた。
そのさなか、新住吉物産支持の伍藤代議士が、鍵のかかった自室で、伝説にあるいし弓を口の中に射込まれて死んだ。
ついで深夜渡り廊下で、同じ新住吉物産の佐川が、同じ方法で殺された。
さらに石落としの張り出しで、京田がおそわれ、城売却に反対するゲルハルトの病身の母が転落死する。
警察は、ゲルハルトの許嫁アマーリアがゲルハルトの母に結婚を反対されていたこと、昔伍藤と関係が合ったことから、犯人と断定し、逮捕しようとする。しかし、京田は伍藤の死体のそばに落ちていた鍵のすりかえトリックを説明、ゲルハルトの母のもとに鍵をおくことができた者はだれかと範囲を絞り、警官を説得、各自の部屋を捜査させる。その結果得意になって伍藤代議士等にラインにまつわる説明をしていた鹿山建設の若き副社長鹿山の自室から、犯行に使ったと思われるスカーフが発見され、鹿山が逮捕される。
しかし、最後にアマーリアから迫られて、京田が、実は犯人であることを認める。
京田は、鹿山、伍藤、佐川に陥れられて無実の罪で獄死した父の敵をねらったのだった。
この書は面白い推理小説の書き方の代表の様な作品に見えた。
話全体がひとつにうまくまとまっているうえ、ラインの古城という名前が日本人好みでロマンチック、しかもそれにまつわる話がくどいほど盛り込まれている。
事件が密室殺人という典型的パターンで、その上伝説に乗っ取っていて、神秘的。
しかも解決へのミスリードが3段に渡っていて読者をまごつかせる。
ただ、普通の素人的解釈なら、鹿山の犯行とするのが妥当なところと思った。
「プラハからの道化たち」と同じ主張が東ドイツから脱走してきたアマーリアの口を通して語られている点も興味深い。
・確かに自分の意志と創意を自由に発揮できる創造的な生き方や仕事が、そう滅多にないものであることはわかる。だが、それにしても、世界は、余りにも不幸と不自由に満ちている。戦争、暴虐、支配、専制、飢餓・・・人間は、歴史から教訓を学び取ることを拒否し、同じ誤りを繰り返して行く。そして我々日本人は、それぞれ自分たちだけの目先の幸福と自由にしがみついて、その背後の世界を見つめようとはしない。
(282P)