冷蔵庫より愛をこめて   阿刀田 高

講談社文庫

冷蔵庫より愛をこめて
男は脱サラし、貸洗濯機業をやったが失敗、病院にはいるが、そのうち妻は金を出してくれた男と良い仲に。知人から勧められて貸し冷蔵庫業を始めた男は、妻の浮気の相手を殺し、その中に・・・。男の狂ったような一人二役の独白が、地下室に響く。

趣味を持つ女
葬式会場に現れる不思議な女。ときには香典が消え、刑事が追跡。女は棺に中に個人の記念にと大きなぬいぐるみなどを入れるのだが・・・・。そのうちに焼き場の係りから妙な噂・・・どうも焼いた後の骨が少し多い。足の分とか、手の分とか。女は弟を援助し、大学を出させたことになっていたが、それも良く調べると他人、それが行方不明。刑事があわてて駆けつけると、ラグビーボールをまさに入れようとしていた。

あやかしの木
気の合わなかった女房が死に、少し財産を得た男は、成長すると女体そのものになるというあやかしの木の種を購入、地下で育てる。男は、妻に似ていなくもないその妹を愛していた。しかし木は成長すると妻に生き写し、妹にはならない。実は妹は整形をしていた・・・。

仮装パーテイ
男は妻と結婚してしばらくだけ、会社で認められ、陽があたっただけ。今は妻は死に、閑職の男は、妻とうり二つの女をバーで見つけ、二人で会社の仮装パーテイに。そして大成功。しかし後日バーに行くと、社長の側近が、彼女に大金を渡しながら話していた。「あなたは社長の前の女にそっくり。彼女は死んだ。悪いようにはしないから社長の女にならないか。」

幸福通信
人員整理が行われようとしている職場のある男の元に、競馬や株の情報。その通り買うと大成功だったが、男は左遷される。誰か一人を切らねばならない課長の粋な芝居だった。

エネルギーの法則
ヒッチハイクした男は、運転手に彼のやっている自給自足農場に連れて行かれる。そこではネズミを猫が食い、猫は太った後、三味線の皮にされ、その肉はネズミの餌にされる「自給自足型」。「そんなことはない。エネルギーの法則に反する。」と叫ぶ男に、運転手は「だから、あんたを連れてきたんだよ。」

歌を忘れない鸚鵡
軽井沢で買った鸚鵡は、彼がそこで関係した外人の日本人妻のものに違いなかった。時々「ヒロシ・・・もう、堪忍。」と奇声をあげる。ある日刑事が訪ねてきた。「彼女は地下室で折檻をされた後、夫に殺されたらしい。」それじゃあ、鸚鵡の奇声は別の意味・・・。

ギャンブル狂夫人
保養地で富豪の夫妻と一緒になった夫婦。夫はギャンブル狂の富豪の妻に、大金をかけて、煙の匂いで6種類のタバコの銘柄を当てるギャンブルに引き込まれる。幸い勝つが、部屋に戻ると妻が「向こうの旦那に勧められて、同額の賭を奥さんが勝つ方に賭けたの。」

幽霊面会術
紀元前15世紀クレタ島で王女が死に、王子は気も狂わんばかり。女王は老博士サビに王女を冥界から呼び返すよう命令。メビウスの輪に気づいた博士は、特殊な装置を作り、王女を上半分だけ、冥界から呼び出すことに成功。ただちに王子が呼ばれるが、今度は王子が下半分だけ残して消滅・・・。

ホーム・スイート・ホーム
結婚前に親しかった女が、死んだとの知らせ。知らせた女の友達のアパートを訪ねると、その母親らしい女が下にもおかぬ接待。最後に母親が実は親しかった女の母とわかり、隣には彼女の死体。「娘が一人で旅立つのは寂しいと考えましてね。」なぜかしびれてきた・・・。

最後の配達人
酒場で一緒になり、船橋方面に向かう夜のタクシーの中。「実は死ぬひとにその前触れを知らせる習慣がある。昔は黒い薔薇だったが、今は握手するんです。その仕事をしないかって頼まれたんですが、断りました。」彼らはタクシーを握手をして、降りて分かれる。すぐにもう一人の男に車のぶつかる音・・・・。

夜の真珠貝
妻と志摩半島への旅行。私は、妻に真珠を送った。夜、バーで男の話。「真珠は月の光のよう。実は女のあそこでも、男の精液をうけて真珠が出来ることがあるのを知ってますか。」そして男はこれがそいつだと実物を示した。「これを買わないか。」「とんでもない。」
ところが妻がトイレにたった時、男はその真珠を作った女の名を言った。それは私が一度だけ関係した女の名だった。

・そうすると、月の光がドンドン貝殻の中にしみこむ訳よ。アコヤ貝はまるで毛糸をたぐってクルクル毛玉を作るみたいに、月の光を巻き取るのよ。それが真珠になるんだってさ。