講談社文庫
チェルノブイリ原発事故による放射能汚染食品が、ヨーロッパから検査対象外の別の国
から輸入されているらしい。事件を告発し、さらに汚染食品の横流しをおっていたジャー
ナリストの竹脇の乗った車が、晴海の桟橋から海にとびこんだ。その妻枝里子と密通し
ていた元厚生省食品衛生監視員の羽川は、輸入食品検査センター設立の親で上長の高木
課長の命を受けて、真相究明に乗り出す。
日本に輸入しようとする商品は、検査の結果、不合格となれば相手国に送り返されるわ
けだが、そのコンテナの中にココム規正品であるLSIを紛れ込ませる手口。逆に日本
から輸出すると見せかけ、不合格にさせ、戻ってくるコンテナの中に麻薬を紛れ込ませ
る手口などが次第に浮かび上がってくる。
そして真相究明を阻止しようとする関連業者、暴力団。個人的な恨みから食品センター
副所長篠田に復讐しようとした高木、その罠にはまり、ミートハウス食品と松田食品の
輸入肉の検査結果を取り違えて発表してしまった篠田、結果追いつめられて自殺した松
田食品の桑島、父の敵をとろうとする娘の真由子等の引き起こす事件が次々とおこる。
そして羽川自身の身にも死の危険が忍び寄る。
重量感があふれ、意外性の豊かなハードボイルドミステリーだ。あまりにも多くの事件
が取り込まれていてまごついてしまう程。見方によればそれだけ劇画的ということも出
来る。業界の裏まで調べた調査過程も面白い。
トリックとしては鉄道線を使って車と運転者に高圧電流を流し、そのショックでアクセ
ルを踏ませ、海につっこませる殺人方法が興味を引いた。
・輸入食品にばらまかれる除草剤・枯葉剤・・・フェノキシ系アミン、オレンジ剤(5
8P)
・ハローダイアルを使った調査(109p)
・小さい頃から赤毛で、クラスの子からよくからかわれたわ。・・・高校へあがるのを
機に髪を黒くそめるようにしたの。でもね、私の評判は変わらなかった。・・・・人を
ひきるけるのは、外見じゃなくて、最終的にはやっぱりその人の内面でしょ。・・・・
それから私は自分を変えようと必死になった。・・・だから自分と正反対の人間に近づ
くことで、何とか自分を変えようとした。(116ー118p)
・車ごと海へ転落させるというのは、保険金殺人の手口としてはポピュラーなものの一
つです。ですけどその場合、まず例外なく、同乗者の保険金が目当てに行われます。車
を運転中に誤って海に転落させておいて、自分だけが脱出して助かる、というよくある
手口です(196p)
・眠らされていたのは間違いないだろう。他に考えられるのは笑気ガスだ。(223p)