講談社文庫
自己顕示欲の強い細井道夫は、名門J大に失敗したが、司会者に転身。
成功しかけていた矢先、自宅密室でガス中毒で死体となって発見される。
机上に残された暗号日記から、自殺と断定される。
そして10年後、弟はふとあれが他殺ではなかったかと考え、恋人妙子、細井と比べて平凡すぎる敗者の人生を歩んでいた村田と相談、仲間で今は作家に転身している浅野を疑う。村田は浅野と親しくなり、浅野は犯行を「大阪の人」が来るのを待って弟の前に告白すると約束する。しかし、3人は「大阪の人」に肩すかしを食わされた上、浅野は、自室密室の中で青酸カリ入りウイスキーを飲んで死んでいた。
そして浅野の告白と見られる遺書。自分は司会の細井にいつも馬鹿にされており、復讐を誓った。
細井を記憶術を教えると誘い、覚えるべき用語を書かせた。その用語集はあとから解読すると彼の自殺を暗示する遺書に見えるもの。そして彼をだまして殺す・・・。
浅井を殺したのは村田か、ならば村田はなぜ密室から出られたか。
浅井が自殺をしたとすれば、裸になり、きつく縛られていたのは自分でやったのか、村田がやったのか。
そもそも浅野の遺書は、浅野の細井の死を他殺と仮定した懸賞応募小説の下書きでは無かったか、細井は自殺ではなかったのか。
様々な答えを暗示したまま小説は終わっている。
真実は「神、そらにしろしめす。」本格派推理である。本格派好みすぎて最後はどうでも解釈できるというところが、一般には好かれるかどうか・・・。
・細井密室のトリック・・・回転式かんぬき錠をトランプをはさんでとめておき、ドアをしめる風圧でトランプを飛ばし、密室を構成させた。
・・・一枚の木の葉を、智者はどこに隠す、それは森の中。(81p)
・浅野密室裸体緊縛放置のトリック
・・・被害者を縛ったのは犯人ですが、密室を作ったのは被害者自身だ(246p)
・読者を楽しませるには、新しいアイデアが必要である。アイデアとは、異質に見えるものどうしを、上手に結びつけることだ。(209p)
・小説作りにおいて・・・・(記憶術の)「もの」を単語に、そして接着剤の代わりに「媒体語」を置き換えてみたらどうだろう。(209p)
・新人として推理小説会に登場しようと思うなら、少なくとも一作は、不可能犯罪とか強烈な意外性など、推理小説の特質を十分発揮した作品をみせるべきだ(297p・・・解説)