講談社文庫
斉藤栄を世に送り出した出世作で乱歩賞受賞。
将棋界の若きヒーロー河辺晋吾8段の愛娘万里ちゃんが誘拐された。おりから8段は最
高位をかけて、前田9段と3番勝負を行う事になっていた。
身代金は1000万、叔父の内田健一と河辺で折半して用意し、犯人の指示に従い、横
浜港VHF局近くに落とす。しかし万里ちゃんは帰ってこない。
捜査で犯人はVHF局を最近退社した月丘とその友人坂本らしいことが分かった。警察
が捜査を進める一方、内田が独自で調査。やがて、月丘が、ついで坂本がそれぞれの逃走先で死体となって見つかる。
そして坂本の死体の元に荷15364なる不思議な紙切れ。須川刑事がついにその紙が
墓地の番号と発見し、駆けつけるとカロートから何かを取り出そうとしている男・・・・
内田だった。内田は息子の作った偽札が身代金に混入していたため、息子の将来を考え
それを取り返そうとしていた。犯人二人を殺したのも内田だった。内田は証拠の偽札を
燃やしながら崖下に飛び降りる。
万里ちゃんは伊豆の小さな温泉にかくまわれていて無事だった。万里ちゃんが戻った頃、
河辺は3番勝負を制し、新しい「最高位」につく。
将棋という特殊な世界と誘拐劇がからんでいるところが面白いが、水と油の感じがしな
いでもない。ところどころにプロフェッショナルな知識がでているところは魅力となっ
ている。
・航空機の送受信機は、現在、VHF(超短波)を使用しているはずです。ところが、
航空洋のメガサイクルは、おおむね、120メガサイの近所ですからね。発信できる場
所は限られているんです。(51p)
・これは恒温漕といいまして、周波数にかんする水晶片をおさめたものです。ですから
丁度真空管のように、この漕を交換しさえすればよいわけで(65p)
・呉服や符帳を覚えましたがね。俵笑酒中如才事敷蔵・・・・これがわかりますか。一
二三四五六七八九の意味ですよ。(191p)