光文社文庫
ハリラックス工業秘書室長野々村省吾は、社長の三女である妻に完全に支配され、鬱屈した毎日を送っていた。
しかし、ある時、家出娘宮沢ひろみを拾い、ロイヤルホテル1423号室で関係をし、うさを晴らし、ひろみを残して帰る。
静岡下田、日高屋旅館当主の耕一も完全に妻晴子の管理下にあった。
ところが、その妻が野々村の泊まった部屋の隣室で心筋梗塞で死んでいるのを発見された。しかも彼女は一階上のスイートルームを野々村省吾の名でとった男と共にいたことがわかり、本物の野々村省吾は疑われた。
しかも、彼のアリバイを与えるはずのひろみが奥多摩で絞殺死体で発見された。
日高は妻を捨てた男に復讐しようと決心し、葬儀参加者を追跡するうち、野々村と情報を交換しあうようになる。
妻が民友党大物小松原正之の秘書橋口則夫と連絡しあっていたことを発見する。
橋口の妹を通して、写真を得、ホテルで当日妻といたことを突き止め、指紋も得て警察に持ち込む。
調査を進めていた新宿署の牛尾刑事等は、これにホテル、およびひろみ死体発見現場にあった遺留品等から橋口を死体遺棄、宮沢殺し犯人として逮捕する。
橋口はホテルに晴子とともにいたことは認めたものの、宮沢については頑強に知らぬと主張。
しかしひろみのホテルで橋口の死体運搬現場目撃したことを示す手紙が発見され、ついに犯行を自供する。
しかし秘書の不祥事として処理され、代議士に影響することはなかった。
比較的早く犯人が分かってしまう点、橋口自供の決め手が拾った手紙となっている点にやや物足りなさを感じるが、小気味のよい社会派推理小説に仕上がっているように思う。
最後に社長のいすがちらつき、法廷での証言を渋る野々村を、刑事が説得し、野々村もこれに応じるところがよく、作者の人間性が現れているように思った。
・セパレートアライバル(48p)
・精液は非分泌型で血液型を決定できない。(56p)
・死者の特徴が警察庁のコンピューターに照会された。・・・・ヒットするとリアルタイムで回答がくる(112p)
・(旅館)お客様にとってはここへこられることは非日常の世界です。しかし私たちにとってはこれが日常なのです(135p)
・刑事訴訟法第218条第2項により、強制捜査によって身体の拘束を受けている被疑者の場合、指紋や足型をとることができる(208p)
・人間は時々計算では割り切れないような行動に出ることがあります。 たとえば自分が出席しなければ成り立たないような重要な式に欠席してみたいと思うようなことが。(254p)