写楽殺人事件    高橋 克彦

講談社文庫

浮世絵研究者の会は嵯峨の主催する浮世愛好会と私の師である西島が実権を握る江戸美術協会に別れ、対立していた。
物語はその内の一人、嵯峨が東北北山崎で水死体となって発見されたことに始まる。
一方私は古美術の展示会で嵯峨の弟の美術商水野から近松昌栄という作者の秋田蘭画の画集を貰い受けるが、その1枚の獅子の絵に「東洲斎写楽改近松昌栄」の署名を見つける。
この画集には小林清親の序文もあったことから私は信用し、写楽=昌栄の仮説をたて、西島門下を離れ嵯峨の本に走った国府の妹冴子と共に実証の旅に出る。
そして秋田藩と江戸文化の深い結び付き、あるいは時の老中田沼の存在に注目するといった推理が展開する。
私は結果に喜びそれを西島に報告するが、西島はそれを自分の手柄として発表しようとする。そして突如西島の死、国府の行方不明、新しく発見された小林清親の画帖と画集の矛盾、サザビーオークションでの写楽肉筆画の出現・・・・。
すべては美術商水野が仲間の美術商と組んで、無名の昌栄の秋田蘭画を写楽の作品として売りだし、利欲を追及しようとしたことに始まったものだった。
写楽別人説の章で写楽の正体と目される13人の候補の比較、秋田蘭画や浮世絵の手法解説、絵師、摺師、彫師、版元が一体となって作る浮世絵論議など専門的な解説も面白い。