シュリーマンの財宝      和久 峻三

光文社文庫

 新装なった高山ロイヤルホテルのスイート・ルームで、美術商八島恭三が死んでいた。赤かぶ検事こと柊検事が聞き出したところ、娘の和歌子と夫でドイツ人美術商ゲインシャーが同宿していたが、和歌子は物音を聞いて隣室を空けたら、恭三が倒れていたのでベッドに運んだまでで何も知らぬ、と主張、ゲインシャーは黙りを決め込み、しかもドイツ領事館からは早期釈放の圧力がかかる始末で、何が何やら分からない。
 柊検事の娘、葉子は、同期の弁護士藤高から手形のパクリ事件を助けて欲しいと頼まれる。茶道の家元法家義尊が、ナチスドイツの崩壊と共に消えてしまったプリアモスの財宝を売る、と言うことで八島に2億8千万の約束手形をだまし取られたと言うのだ。藤高と柊の情報交換から背景に、高山ロイヤルホテルに同時期同宿していた元ss隊員アイゼンベルグなる男が、プリアモスの財宝の話を持ち込んだと分かるが既に出国していた。
 葉子と藤高はハンブルグに飛び、アイゼンベルグを訪ねる。一方赤かぶ検事は榊田警部補を伴ってまずパリに赴き、現地の梅原から事情を聞く。現地にもこの事件は伝わっており、アイゼンベルグは既に姿を消していた。その行く先がザルツブルグの僧院と聞いて出かけるが双方空振り。この間にアイゼンベルグ夫人が姿を消し、運転手が殺された、アイゼンベルグはミュンヘンで会うと連絡してきた。
 しかしミュンヘンに着くと、アイゼンベルグは何者かに誘拐された後、しかも柊検事が一緒だったという。やがてリューベックでアイゼンベルグ夫人の拷問惨殺死体が見つかる。誘拐に使ったと思われる白い車がオーストリア国境近くの街で見つかる。「赤いさそり」なる西独過激派から「ゲインシャーを釈放すれば、誘拐した柊検事を釈放する。」との連絡が入る。日本ではゲインシャーが八島恭三殺害の件で起訴され、裁判が始まる。
 柊検事誘拐対策会議で、これはアイゼンベルグの狂言誘拐ではないか、との説が流れ、たが、アテネでアイゼンベルグの拷問惨殺死体が発見されるにおよび、ゲインシャーを釈放した。柊検事はアテネ近くで解放される。一方、手形の支払い日が到着し、金融ブローカー金森弘蔵の訴えにより裁判となり、手形を割り引いたのが和歌子と判明した。
 和歌子は、詐欺罪でICPOを通じて手配され、ウイーンのホテルで逮捕された。しかし金は消えていた。貢いだのだ。宮田薫・・・赤いさそりのリーダー。和歌子の自白により、事件当時プリアモスの財宝は、アイゼンベルグが所持し、仲介をゲインシャーがしていたが、八島恭三が約束手形を持ち帰ったため、現金を主張するゲインシャーと口論になり、殴り殺されたと言うのだ。ドイツでの殺人事件は、すべて赤いさそりがプリアモスの財宝を求めて起こしたものだった。それではプリアモスの財宝はどこに消えたのか。ドイツ大使館から外交特権を使って一人の領事が出国していた・・・・。
 たたき上げで、赤かぶが好きえ方言まるだしの、柊検事の特色がよく書けている。その検事が部下とドイツ、フランス、オーストリーと事件を追って、赤ゲットまるだしで渡り歩くところが面白い。シュリーマンがトロヤで発見したプリアモスの財宝がナチスドイツの手に渡っていたが、それがベルリン崩壊と共に忽然と姿を消した、という話も一応もっともらしい。法廷部分の描写、手形について何も知らない茶道家元御曹司の描写も良くかけていると思う。この作品が書かれたのが昭和54年(79年)、いまから20年前になり、赤ゲット旅行記はやや古くなった感じがするが、それでもエンタテイメント小説としてまだ優れていると感じるのは、筆者の読者にたいするサービス精神の故だろうか。
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