カッパ・ノベルズ
「野獣死すべし」を思わせる、すっきりした、読後爽快感の残るハードボイルド。
主人公の鮫島警部もいいが、脇役の晶が実に生き生きと描かれている。
推理のパートナーに若い女性をおくやり方は、たとえば赤川次郎の幽霊列車の永井夕子などに見られるが、晶はロックシンガーで、からっとしていて、それでいて情が深く、ツッパッていて、セクシーでまた違った魅力を出している。濡れ場の描き方も嫌みがなく、それでいて生のエロっぽさを感じさせる。
新宿暑には、挫折した一匹狼の鮫島という警部がいた。
彼はやくざを憎み、同僚と離れていつも単独で行動をする。
歌舞伎街で一発の銃弾で若い警官が二人射殺される。
凶器は破壊力の強力なライフルらしい。
そして次の月曜日に、それから5日後に、別の警官が襲われる。鮫島は聞き込み情報から犯行に使われた銃が、密造屋木津が作ったものと考える。張り込みと尾行の末、ついに製造現場を抑えるが、逆に相手に捕まってしまう。危機一髪、同僚のだめ警部桃井に救われる。
銃は、木津のところからオカマのカズオが持ち出し、それを警官に恨みを持つ砂上が借り出し、犯行に及んだものだった。砂上の次の目標が晶だと気づき、鮫島は新宿のライブハウスにかけつけ、晶を救う。
・病気の我が子の将来をはかなんで殺した親と、年寄りをだまして全財産を巻き上げたやろうとじゃ、法の上じゃ、子殺しのほうが罪が重い(26p)
・定員600名の新宿暑には、285名の制服警官がいる。・・・・新宿暑は、警視正の署長以下、副所長の警視、それに警部が課長を務める、警務課、会計課、警備課、防犯課、刑事課、交通課、警ら課の七つの課がある。(44p)
・高圧的な態度をとりなれている公安のエリートが捜査に加われば、必ず摩擦がおきる。「公安は真空掃除機よ」、よく言われる言葉だった。(73p)
・拳銃弾は、ほぼ音速か、それより遅いスピードで飛び出すが、ライフルは倍か、3倍だ。(85p)
・左翼団体は自分たちを兵士と考え、警官は敵兵である。兵士が兵士を殺すのは戦闘行為であって、これは「殺人」ではない。不意を打つのは、圧倒的な戦力の大きな敵に対して挑む場合、戦術、戦略的に当然の作戦であると考える(91p)
・もう数分早く、若者がすべての戦意を奪われる前に、誰かが止めに入っていれば、あの言葉はなかったのではないか。見捨てた街、見捨てた通行人、見捨てた警官に対する怒りはなかったのではないか(236p)