深夜の法廷          土屋 隆夫

光文社文庫


深夜の法廷
 秋葉香江は、竹下夢二の絵にあるようななきぼくろのある可愛い女の子だったが、心は残忍な性格だった。彼女は、中学の教師河野洋平と結婚したが、夫が同級生の高村伴代なる女性と浮気をしていることを発見し、復讐を企てる。
 ピンクビデオを見せると友達の美佐を誘い、実家に帰り、母と美佐を睡眠薬で眠らせた後、時計を操作して空白の1時間を作った上、美砂のスクーターで自宅に戻り、浮気の現場に踏み込む。散々説教した後、和解と称して砒素入りのウイスキーを飲ませ、伴代を殺す。うろたえる夫に指図して現場を偽装し、自分は深夜の道を実家に戻ってしまう。
 捕まった夫は「妻の指図で・・・」と弁明するが、もちろん妻は「実家にいた。」の一点張り。 夫は精神病院に入り、離婚も成立し、香江は貰った慰謝料で上山田温泉にバーを開く。
 しかし深夜のバーに美佐が訪ねてきて、強請る。「スクーターは翌朝汚れていたわよ。私はビデオを見ているうちに寝たみたい。時計を操作出来るのは、あなただけだった。決定的なのは、あの日伴代さんに着せたあなたのネグリジエを保管している事よ。」
 香江は、これまでと隙をみて美佐をフライパンで殴り殺す。しかしホステスのマリが、訪ねてきて・・・・。

・砒素について(52p)
・谷川町の時計を30分すすめ、水沢市では30分遅らせる。それで1時間という人為的な時間を作り出すことが出来る。(144p)

半分になった男
 3年前、北上昭平は、体半分に墨をぬって自宅で首を吊っていたのが発見され、自殺として処理された。北上の妻の時枝と主治医の秋田照男が、結婚した。ところが中部タイムズに投書があり「北上昭平の死は自殺ではない。 時枝と照男を調べて見よ。」 北上は精神病だったらしく、生前「自分の体に他の男が入り込んでいる。そいつを消す必要がある。」とつねづね言っていた。
 しかし調べてみると、時枝がわがままで、膨大な不動産を持っていたこと、照男は大病院を開業したがっていたことがわかった。
 記者は時枝にせまる「北上はエコーセンプタムだった。つまり主治医のやることをすべてまねする病気だった。これを利用して二人で殺した。しかし、時の経過と共に、あなたは秋田を信頼できなくなった。そこで秋田はこんな危険な男だとの印象を与えるためにあの投書をした。」

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